英政府の予算案が農業界に波紋、農産物供給ストの呼びかけも

(英国)

ロンドン発

2024年11月08日

英国政府が10月30日に発表した秋季予算案(新政権として初の秋季予算案発表、ブラック)が農業界に波紋を広げている。

英国の相続税では、基礎控除などに上乗せして農業資産控除が認められており、農地などの農業資産について100%の控除を受けられるが、同予算案では、100万ポンド(約1億9,800万円、1ポンド=約198円)超の農業資産に対して2026年4月6日以降、100万ポンドを超える分に対して20%の相続税が課されることとなる(注)。

英国の農業団体NFU(全国農業者組合)は、これを受けて「予算編成に先立って大臣らから農業資産控除や事業資産控除の変更は検討の対象外と聞かされていた」「農業資産控除に関する約束を恥知らずにも破ることは、英国の食料生産を続け、将来の計画を立て、環境を守る次世代の能力を多く奪うことになる」とコメントを発表し、相続税案の撤回を求めた。

このような中、レイチェル・リーブス財務相は、11月3日のBBCの番組に出演し、「昨年、裕福な上位7%の人が農業資産控除の総額の40%の恩恵を享受していた。公共サービスが非常に大きなプレッシャーにさらされており、農業者もまた公共サービスに頼っている中、そのような控除を続けることはできない」と説明した。また、11月6日の党首討論でキア・スターマー首相は、保守党のケミ・ベイデノック党首の質問に答えて「大多数の農業者は影響を受けない」と述べた。

一方、NFUは、11月19日に1,800人規模の大規模なロビーイングを政府と議会のあるウェストミンスターで実施することとしている。さらに、一部報道によれば、農業者による「ストライキ」として、肥料原料として用いられる下水汚泥の引き取りの停止やスーパーマーケットへの農産物供給の停止を呼びかける動きも出ている。

(注)英国の相続税は、基礎控除額32万5,000ポンドをはじめとした各種控除を施した遺産額に税率40%が課される。なお、相続税は無利子で10年間かけて支払うことが可能。

(林伸光)

(英国)

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