トランプ氏、エネルギー長官に民間企業CEOのライト氏、新設のエネルギー評議会トップにバーガム知事を指名

(米国)

ニューヨーク発

2024年11月19日

米国のドナルド・トランプ次期大統領は11月16日、2025年1月に発足する新政権のエネルギー長官にエネルギー関連企業リバティー・エナジーの創業者兼最高経営責任者(CEO)のクリス・ライト氏を、11月17日には米国連邦通信委員会(FCC)の委員長にFCC共和党側委員のブレンダン・カー氏を指名すると発表した。

トランプ氏はライト氏について、米国のエネルギー自立を促し、世界のエネルギー市場と地政学を一変させたシェール革命(注1)の先駆者の1人だと称した。ライト氏が創設したリバティー・エナジーは、石油・ガスを含むシェール層に酸などの化学物質が混入した水を注入し、シェールオイルやシェールガスを採取する水圧破砕法(フラッキング)を手掛ける(注2)。ライト氏は化石燃料の強力な支持者であり、化石燃料の燃焼と気候変動の関連性は認めているが、気候変動と異常気象の因果関係には疑問を呈しているという(CNN11月16日)。またトランプ氏は、11月15日にはノースダコタ州のダグ・バーガム知事(共和党)を内務長官、および新設の国家エネルギー評議会(NEC)委員長にも指名した(注3)。NECはエネルギー生産の民間投資を促し、不必要な規制の撤回などを目指す(注4)。バーガム氏はNEC委員長として、国家安全保障会議(NSC)にも参加する。なお、NECにはライト氏も参加予定だと発表している。

FCC委員長に指名したカー氏について、トランプ氏は、言論の自由の擁護者であり、米国人の自由を抑制してきた規制と戦い米国経済を支援してきたとし、雇用創出やイノベーターを苦しめてきた規制を終わらせると述べた。カー氏は一方、ビッグテック(巨大IT企業)には規制を強化すべきとの立場で、保守派政権のための政策提言書である「プロジェクト2025」の中において、同氏が執筆したFCCの章で、「市場における支配的地位を乱用する企業が個人の自由を脅かすという問題の対処に、FCCは重要な役割を担っている」と記している。

トランプ氏はそのほか、退役軍人長官にダグ・コリンズ元下院議員(共和党、ジョージア州)、保健福祉長官に弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏を指名すると発表した。ケネディ氏についてトランプ氏は、10月に同省での起用を示唆していた()。

(注1)従来は経済的に採掘することが困難だったシェール層に含まれる石油ガスの採掘が、技術革新により2000年代後半に本格化し、米国内の生産量増加(輸入量減少)および米国内エネルギー価格が低下した事象を指す。

(注2)地盤への砂、水、化学薬品の注入に起因する潜在的な健康リスクを懸念する指摘もある。

(注3)バーガム氏は2022年10月に、ジェトロの東京本部で行われた「ノースダコタ州ビジネス・投資セミナー」で講演し、同州が目指す2030年までのカーボンニュートラルについては、規制よりもイノベーションを促進することが重要と主張していた(2022年10月4日記事参照)。

(注4)共和党の政策綱領では、「エネルギー生産に対する規制撤廃」などがうたわれている。同綱領を基にしたトランプ氏の政策については、2024年8月9日付地域・分析レポート2024年米大統領選、ブラック ジャック参照。

(赤平大寿)

(米国)

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