中国、デュアルユース品目で米国型の再輸出規制を導入、エンドユーザー管理も強化
(中国、日本、世界)
調査部中国北アジア課
2024年11月07日
中国国務院は10月19日、「両用(デュアルユース)品目輸出管理条例(国務院令第792号)」を公布した。同条例は輸出管理法(2020年12月1日施行)などに基づき、両用品目(注1)の管理規定をより明確化し、強化するもの。12月1日から施行される。
商務部の解説(10月19日付)によると、同部が規制対象となる具体的な貨物や技術などの統合リストの制定を進めており、同条例と同時に施行するとしている(注2)。
同条例のポイントについて、北京市環球法律事務所の任清パートナー弁護士は次の点を挙げている(「輸出管理と制裁 微信公式アカウント」10月20日)。
- 中国域外(中国語では「境外」)で製造など(注3)される特定の品目についての域外管轄権の確立
- 注視リスト制度の新設
- 輸出経営者、サービス提供者に対する多数の報告義務など
1.の域外管轄権について、同条例第49条で、米国輸出管理規則(EAR)のデミニミスルールや直接製品ルール(FDP、注4)に相当する再輸出規制を規定した。具体的には、「中国を原産とする特定の両用品目を含有、統合または混合して域外で製造された両用品目」「中国を原産とする特定の技術などの両用品目を使用して域外で製造された両用品目」「中国を原産とする特定の両用品目」などが対象となる。これらについて、中国域外の組織や個人が中国域外で特定の仕向け国や地域、特定の組織や個人に上述の貨物、技術やサービスを移転・提供する場合、同条例の関連規定に従うこととした。なお、同条例公布時点では、デミニミスルールの閾値に関する具体的規定(注5)や対象となる品目の範囲は明示されていない。
2.注視リスト制度の新設については、第26条に規定しており、米国のUnverified List(未検証エンドユーザーリスト)に相当する内容となっている。具体的には、「輸入業者、エンドユーザーが規定された期限内に検証に協力せず、関連する証明資料を提出しなかったことで、エンドユーザー、エンドユースを確認できなくなった場合、国務院の商務主管部門は関係する輸入業者、エンドユーザーを注視リストに加えることができる」などとした。
3.の報告義務については、第38条で、「中国の公民、法人、非法人組織は外国政府の提起する輸出管理に関わる訪問、現場検証などの要求を受けた場合、速やかに国務院の商務主管部門に報告しなければならない」などと規定した。
なお、1.の域外管轄権について、任弁護士は、第49条で「特定の仕向け国や地域、特定の組織や個人」「特定の両用品目」など「特定」という用語で対象を限定する規定となっていることを受け、「全ての仕向け国や地域、全てのエンドユーザーに対し、一律に適用されるものではないことを示している」と解説した。
(注1)民間と軍事の両方の用途で使用できる貨物や技術、サービスなどを指す。
(注2)中国は1990年代以降、両用品目のさまざまなカテゴリーに応じて、数多くの行政法規や規則を公布しており、今回公布の条例に基づくリストで、それらを統合するとしている。
(注3)詳細は第49条を参照。
(注4)米国外で生産された製品でも、米国製の技術やソフトウエアを用いている場合、EARの対象として、輸出などについて事前の許可申請を求めるルール。
(注5)例えば、EARで、組み込まれた米国原産品目の包含比率が25%、10%などに相当する具体的基準を示した規定。
(藤原智生)
(中国、日本、世界)
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