2025年度予算案を発表、楽観的な見通しへの指摘も
(メキシコ)
メキシコ発
2024年11月26日
メキシコ大蔵公債省は11月15日、2025年度(注)の歳入法案と歳出計画を国会に提出した。これらはクラウディア・シェインバウム政権への移行後、初めて提出された予算案だが、前年度に続いて厳しい内容となった。
基礎的財政収支(プライマリー収支)はGDP比で0.6%の黒字となり、2024年度の1.4%の赤字から黒字に回帰する見込みだ。しかし、総合財政収支はGDP比3.2%の赤字とし、前年度に続く大きなマイナスとなった。歳入は前年度予算比で3.3%増加、歳出は3.6%減少となった。石油収入や手数料収入などを除く税収は2024年度歳入予算比で3.1%増を見込んでいるが、一般会計の歳出は前年度比7.3%減で、歳入と歳出の差が縮小する見込みだ。債務残高の対GDP比は51.4%と試算されている。
予算策定の前提となる「経済政策一般基準(CGPE2025)」によると、政府は2025年の経済成長率を2.0~3.0%(中間値2.5%)と見込んでいる(添付資料表参照)。これは、民間シンクタンク41社の経済成長率見通しの平均値1.22%(2024年11月1日中央銀行発表)、中央銀行の予測値1.20%(2024年8月28日中銀発表)と比較すると、かなり楽観的な値となっている。政府の2025年のインフレ見通しは3.5%で、中銀の3.0%よりは高いが、前述の民間シンクタンクの見通し平均値3.86%よりは低い値となった。
民間部門は歳入の脆弱性を指摘
ロヘリオ・ラミレス・デ・ラ・オ大蔵公債相は「この予算案はメキシコ国民を優先し、戦略的分野への投資の促進、慎重で持続可能な財政へのコミットメントに重点を置いた政策を反映している」と発言した(「エクセルシオール」紙11月22日)。また、同大臣は「2025年は税制改革を行わない」とも明言した。
一方で、大手金融機関BBVAは11月15日付のレポートで、2025年度予算案を「財政再建の段階的なプロセスの始まり」とし、「財政赤字が減少すれば、将来的には債務残高の対GDP比は安定するが、予算案は経済成長を楽観的に想定しているため、財政赤字は予算よりも膨らむ可能性がある」とまとめた。さらには、「社会福祉プログラムや公的年金の支払い、PEMEXの継続的な支援、インフラ劣化などにより、今後数年間の財政の脆弱(ぜいじゃく)性が予測されるため、政府は税収増加のための財政改革を立案・実施する必要がある」とし、「インフォーマルと脱税の削減に取り組むべきだ」と提案した。
(注)メキシコの会計年度は暦年(1~12月)。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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