ゴールデンビザ廃止を下院で可決、年明けから発給停止の見通し
(スペイン)
マドリード発
2024年11月21日
スペイン議会下院は11月14日、一定額以上の投資を行うEU域外の個人に在留資格を付与する「ゴールデンビザ」の廃止を盛り込んだ法案を可決した。上院での審議となるが、2024年末までに成立し、2025年1月以降は新規申請が停止される見通しだ。
同ビザは、富裕層による投資誘致を目的に2013年に導入され、国債などの有価証券など(種類により100万または200万ユーロ以上)や不動産(50万ユーロ以上)といった投資要件を設けていた。今回可決された措置は、これら全てを廃止するもの。
政府はこれに先立つ4月、同ビザ制度の導入以降の発給件数のうち94%に相当する1万4,576件が有価証券などではなく、不動産購入による発給だったことを明らかにした。発給対象は主に中国、ロシア、英国、米国、ウクライナ、イラン、ベネズエラ、メキシコ国籍で、購入物件の90%がバルセロナやマドリード、地中海沿岸のリゾート地に集中していると公表した。
特に2022年以降は発給数が以前の2倍以上に増加し、住宅市場での投機や価格高騰を招いているとして、住宅政策の一環としてゴールデンビザを廃止する意向を明らかにしていた。同ビザによる不動産購入が購入全体に占める割合は地域によって異なるが、5~10%程度で、政府は民泊などとともに住宅市場を圧迫していると主張。現地不動産サイトを見ると、現在、マドリード市内での住宅価格は、一般的な80~90平方メートルほどのアパートでも、50万ユーロを優に超えるため、ゴールデンビザ発給の金額要件は既に富裕層向けとは言い難い水準になっていた。
同措置が住宅市場の正常化に寄与するかどうかは賛否あるが、その一方で、EUでも、資金洗浄リスクやウクライナ情勢以降の安全保障上の懸念により、ゴールデンビザ制度自体への風当たりが強い。欧州委員会が9月に公表した関連報告書によると、2023年以降、アイルランド、オランダ、ポルトガルなどが同制度を廃止または縮小しており、スペインもこれに続くかたちだ。
現地報道によると、直近ではゴールデンビザ廃止を見越した駆け込み申請の動きがみられるという。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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