IEA、2024年と2025年の天然ガス需要は過去最高との予測、地政学的な影響も
(世界、中東、アジア、カタール)
調査部中東アフリカ課
2024年10月07日
国際エネルギー機関(IEA)は10月3日、天然ガスの供給状況に関する報告書「Global Gas Security Review 2024」において、世界の天然ガス需要は2024年に過去最高となるとの予想を示した。一方で、パナマ運河や紅海での通行に懸念も発生している(地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向カジノ)。
パナマ運河は降雨量の不足により、2024年8月の液化天然ガス(LNG)タンカーの通航数が前年同月比70%減となった。また、紅海におけるイエメンのフーシ派による船舶の攻撃により、スエズ運河のLNGタンカーの通航数は2024年1月から9月までで前年同期比で約90%も減少したという。両運河でのLNGタンカーの通航数が減少の中、喜望峰周りのルートでは2024年1月から8月までの通航数が前年同期比5倍となった。喜望峰は迂回ルートのため、輸送にかかる時間とコストは増加した。報告書では、迂回により、LNG供給の減少にはつながらなかったものの、世界のガス市場におけるLNG取引の潜在的な脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしたと指摘した。
ガス需要は過去最高、中東LNGの案件増
同報告書によると、2024年の世界の天然ガス需要は、アジア市場の急成長により、前年比2.5%以上増加し、過去最高の4兆2,000億立方メートルに達する見込みだ。なお、アジア太平洋地域が、ガス需要の増加分の約45%を占めたほか、欧州の産業用ガス需要回復も需要の増加に貢献しているという。2025年も主にアジアの経済成長により、ガス需要は2.3%増加するとの予測だ。
2022年のロシアのウクライナへの侵攻による天然ガス危機以降、LNG液化能力は1,500億立方メートル以上も増加した。2022年と2023年の増加分のうち75%を米国が占めたほか、マレーシア、カタール、メキシコ、コンゴ共和国、ガボンなどでの新規プロジェクトも承認された。2024年の第1四半期から第3四半期にかけても増加が継続し、中東の案件も多かった。特にカタールが多く、その他、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、メキシコ、コンゴ共和国を含め450億立方メートル以上の案件が承認された。
また、報告書では、ウクライナ危機以降、供給元国も供給先国も天然ガスの安定供給確保を重要視する傾向があると指摘した。2023年以降、長期の仕向地固定のLNG契約が多いという。2023年以降、契約量の85%を10年以上の契約が占め、仕向地固定契約は70%以上を占めた。大規模契約(年間40億立方メートル以上)は2023年の契約量の57%を占め、2017年以来最大の割合となった。
なお、OPECによると2023年の天然ガス生産量は世界全体で4兆2,829億立方メートル、OPEC加盟国合計のシェアは15.7%だった(2023年の天然ガス生産量は世界で4兆2,829億立方メーブラック)。
(井澤壌士)
(世界、中東、アジア、カタール)
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