IMFの経済見通し、米国の成長率は上振れも、関税引き上げなどに伴う下方リスクを警戒
(米国)
ニューヨーク発
2024年10月23日
IMFは10月22日、最新の世界経済見通し(World Economic Outlook)を発表した。
この見通しは米国の経済成長率について、2024年2.8%(7月時点2.6%)、2025年2.2%(7月時点1.9%)と予測しており、7月時点の見通しから上方改定した。2024年の成長率が上方修正されたのは、消費と設備投資の伸びが7月時点の予測よりも高く推移したことによるものだ(関連ブラック ジャック 賭け)。中でも実質賃金の増加と、株式や不動産価格の上昇に伴う資産効果が消費の強さの要因となったと指摘している。2025年は失業率が4.4%まで上昇するなど、労働市場の冷え込みに伴って消費が落ち込むことにより成長率はやや減速するものの、IMFが推計する長期成長率(2.1%)を上回る比較的堅調な成長が続く見通しとなっている。
もっとも、今回発表した見通しでは、こうしたベースラインに加え、上振れ・下振れの可能性にも言及しており、米国を含めた世界経済のリスクは下振れにより傾いていると指摘している。IMFは具体的なリスクシナリオとして、次の条件下で試算している。
- 米国の関税引き上げに伴い、米国とユーロ圏、中国の3地域が互いに10%の追加関税を課し、米国とその他の地域間でも同様に10%の追加関税が課される。
- 報復関税の応酬に伴い、将来的な通商政策の不確実性を忌避して、製造業などの投資が抑制される。
- トランプ減税が10年間延長される。
- 移民政策の厳格化に伴い、米国やユーロ圏の労働力が押し下げられる。
- 関税引き上げに伴う経済への悪影響や、インフレ再燃に伴う金融政策の引き締め、政府債務の増加に伴う国債利回りの上昇などにより、金融環境が悪化する。
いずれも、共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領が掲げる政権公約に合致するものとなっており、事実上、トランプ氏が当選した場合のリスクシナリオを検討したかたちだ。
この条件下で試算された主要な変動は次のとおりで、この結果、2025~2030年の平均でGDPを約1%押し下げるとしている。
- 関税引き上げの影響により、GDPが2025年は0.4%、2026年は0.6%押し下げられ、その後も同程度の影響が続く。
- トランプ減税の延長により、2025年から2030年にかけてGDPが0.4%押し上げられるが、インフレ率も0.2%上昇し、連邦準備制度理事会(FRB)が定める政策金利の水準はベースラインシナリオよりも上昇する。
- 移民の減少により、インフレ率が0.2%上昇し、GDPが0.5%押し下げられる。
(加藤翔一)
(米国)
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