紅海情勢悪化が世界貿易やアフリカの物流にも影響、UNCTAD報告

(世界、中東、アフリカ、エジプト、南アフリカ共和国)

調査部中東アフリカ課

2024年10月23日

国連貿易開発会議(UNCTAD)は10月22日、海上輸送に関する報告書「REVIEW OF MARITIME TRANSPORT 2024外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。同報告書によると、世界の海上貿易は2023年に2.4%増加の123億トンとなり、2022年の縮小から回復した。2024年は2%成長し、2029年まで年平均2.4%成長するとの予測だ。

同報告書では、スエズ運河やパナマ運河などの海上交通の要衝(チョークポイント)が、地政学的な緊張と気候変動による圧力の高まりに直面しており、輸送ルートが延長され、サプライチェーンに負担がかかっていると指摘する。世界の貿易量の80%以上が海上輸送されているため、食料安全保障やエネルギー供給、世界経済にも影響を及ぼす。

航路の長距離化により、世界の船舶トンマイル(輸送トン数に輸送距離・マイルを乗じた数値)需要は3%、コンテナ船需要は12%増加した。品目別の需要を見ると、鉄鉱石、石炭、穀物の需要は堅調だ。一方、コンテナ貿易は2023年にわずか0.3%の増加にとどまるものの、サプライチェーンの安定化次第で2024年には3.5%回復するとの予想だ。

また、航路が長くなることで、港湾の混雑、燃料消費量の増加、乗組員の賃金や保険料など運賃の上昇、海賊行為にさらされるリスクの上昇、二酸化炭素(CO2)排出量増加などが生じる。もし運賃高騰が持続すれば、世界の消費者物価が2025年までに0.6%上昇すると予測している。

紅海危機はアフリカ各国にも影響

同報告書によると、2024年半ばまでに、紅海のアデン湾を通行する船舶の容量は76%減、エジプトのスエズ運河では70%減となった。一方、南アフリカ共和国の喜望峰回りは89%の急増をみせた。

喜望峰へのルート変更によって南アの港の混雑が増加したが、アジアと欧州を結ぶ海上ルート上に位置するマダガスカル、モーリシャス、ナミビア、タンザニアなどの国々にはチャンスが生まれた。ジブチで約31%、スーダンでは34%の対外貿易量をスエズ運河に大きく依存しており、紅海情勢悪化の影響を受けることになる。加えて、東アフリカでは、貨物の配達時間延長によって生鮮食品やコンテナが不足し、また、アボカドや紅茶、コーヒーのサプライチェーンに影響が出ているという。

なお、世界の船舶登録を見ると、リベリアは2022年に載貨重量で世界最大の船舶登録国となり、30年間首位を保っていたパナマを上回った。

〇参考:ブラック ジャック サイトブラック ジャック サイト

(井澤壌士)

(世界、中東、アフリカ、エジプト、南アフリカ共和国)

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