EU司法裁、動物由来の食品名称を植物由来の製品に使用可能と裁定
(EU、フランス)
ブリュッセル発
2024年10月15日
EU司法裁判所(CJEU)は10月4日、EU加盟国は法令で内容などを定義している名称でなければ、伝統的に動物由来と連想する食品の名称を植物由来の製品に使用することを禁じることはできないとの判断を示した(プレスリリース)。
今回の裁定のきっかけは、フランスで5月に施行された植物由来の製品に「ステーキ」など動物由来の食品の名称使用を禁止または制限するデクレ(政令)だ(関連ブラック ジャック コツ)。フランスの国務院(裁判所)は、ベジタリアンの団体や代替食品メーカーなどの訴えを受け、CJEUに対し、同政令がEUの食品表示に係る規則(EU)1169/2011に適合しているか判断を求めていた。
CJEUは、「法令で当該食品の特性などを定義し、食品の名称使用に一定の要件を課すもの」に限り、消費者保護の目的で正当な措置と認められるが、フランスの政令はこれに該当しないと判断。ステーキやハンバーガーなどは「法令上の定義がある名称」ではなく、「広く通用している、または製品の内容を説明する名称」であり、加盟国は植物由来の製品の生産者に名称使用を禁止できないとした。ただし、製品の販売や宣伝において加盟国の所管当局が消費者の誤解を生むとみなした場合、当局は事業者を訴追することが可能だと付け加えた。
フランスで提訴した団体・企業のうち、欧州ベジタリアン同盟(EVU)は同日、EUレベルでステーキなどの名称について法的に定義することは困難であり、CJEUの判断は他の加盟国による類似した法令制定を抑止し、流通促進やさらなる製品開発に資すると歓迎した(プレスリリース)。
一方、欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECAは10月7日付の声明で、CJEUが「加盟国は法令で定義された新たな食品の名称を採択できる」と述べたことから、マーガリンとバターを例に挙げ、代替製品は独自の名称を持つべきと主張した。欧州委員会と加盟国に対し、動物由来の製品の法的定義に係る法案の迅速な提出を要請した。なお、EUでは規則(EU)1308/2013により、乳製品は一部の例外を除き、動物由来の製品と定義されている。
(滝澤祥子)
(EU、フランス)
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