マルコス大統領、オフショア事業者によるデジタルサービスへの付加価値税課税法案に署名
(フィリピン)
マニラ発
2024年10月09日
フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は10月2日、非居住の外国人事業者(以下、オフショア事業者)によるデジタルサービスに対し付加価値税(VAT、注1)12%を課す法案(共和国法第12023号、注2)に署名した。
従来のフィリピンの税法では、オフショア事業者が提供する電子商取引などへの課税が不明確だった。成立した同法では、未徴収の税収を確保するとともに、同国内のデジタルサービス提供事業者とオフショア事業者との間に平等な競争の場を提供することを図る。同法成立により、マルコス大統領は今後5年間で1,050億ペソ(約2,730億円、1ペソ=約2.6円)の税収をもたらすとし、税収の5%をクリエーティブ産業(注3)の育成に投じることを明らかにした。
現地報道によると、アテネオ・デ・マニラ大学経済学部のレオナルド・ランゾーナ教授は、今回の法案により政府の税収は増えるものの、来年度の予算が前年度比10.1%増となり、それを賄うには不十分とする。また、フィリピンの独立系シンクタンクIBON財団のホセ・エンリケ・A・アフリカ所長は、同国の税制が所得と富に対する累進課税よりも間接課税にシフトすることに懸念を表明しているという(10月3日付「ビジネス・ワールド」紙)。
フィリピンでは、関係省庁は大統領の同法案への署名から90日以内に施行細則を策定する必要がある。また、施行細則の策定から120日後には、オフショア事業者へのVAT課税が開始されることとなる。
(注1)Value Added Taxの略で、モノやサービスの購買時に課せられる間接税のこと。
(注2)課税の対象となるサービスは、映画や音楽、画像、ブラック ジャック 確率のデジタルコンテンツ、電子商取引、ソフトウエア、モバイルアプリケーション、ビデオやゲームのオンライン使用権、オンライン広告、検索エンジンサービス、ソーシャルネットワーク、ウェブ配信、ウェブセミナーなどがある。
(注3)クリエーティブ産業とは、出版物やデジタルコンテンツ、研究開発、芸術作品などといった人間の創造性や才能が関与する産業のこと。
(中村和生)
(フィリピン)
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