9月の米ISM景況感指数、製造業と非製造業で対照的な結果、利下げ効果発現までには時間要するとの見方も

(米国)

ニューヨーク発

2024年10月04日

米国サプライマネジメント協会(ISM)は10月1日に9月の製造業景況感指数を、3日に9月の21 トランプ業(非製造業)景況感指数を発表した。製造業と非製造業で対照的な結果となった。いずれも引き続き11月5日の米大統領選挙が投資や事業計画に影響を及ぼしているほか、雇用は低調だった。連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ(米FRB、政策金利の誘導目標を0)は歓迎されているものの、現段階では実感できるほどの効果は表れていないとの意見が大勢だった。

製造業景況感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは47.2で、前月から変わらず、ブルームバーグによる市場予想(47.6)を下回り、6カ月連続で基準値の50を割り込んだ。項目別では、指数の構成要素のうち生産(49.8)、新規受注(46.1)、雇用(43.9)、在庫(43.9)の4項目で50を下回り、短期的な見通しは低調だ。業種別では、縮小と回答した業種の数(13業種)は前月(12業種)からわずかに増加、産出額の大きい6業種(注1)も5業種で縮小だった(注2)。

ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は結果について「金融政策と選挙の不確実性により、企業が資本と在庫への投資に消極的だったため、需要は引き続き低迷している」として、前月とほぼ同様の要因を指摘した。また、9月は自動車関連の需要減速を指摘する企業が多く、「第4四半期(10~12月)の予測はさらに引き下げられ、幾つかの新しいプログラムが2024年から2025年に延期された。人員、資本、供給はそれに応じて縮小されている」(輸送機器)、「北米における自動車生産の需要は弱まり始めている」(化学)、「自動車メーカーが注文を減らす、またはキャンセルしており、(事業の)ペースは鈍化している」(一次金属)といった声が寄せられた。今後は利下げの効果が期待されるが、消費者の自動車需要が回復するまでにはしばらく時間がかかる見込みだ(オートモーティブニュース9月18日)。

利下げの設備投資への影響については、「2025年第1四半期(1~3月)以降にならないと効果が実感できないだろう」(金属加工)、「2025年の計画を確定するため、金利の低下と11月の選挙結果を待っている」(家具)といった声が聞かれ、同様に効果が発現するまでに時間を要するとの見方が多い。

一方、9月の非製造業景況感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは54.9で、前月(51.5)から大幅に上昇した。市場予想の51.7も大きく上回った。項目別では、ビジネス活動(59.9)、新規受注(59.4)、入荷遅延(52.1)が50を上回った。雇用は48.1と基準値を下回った。業種別では、全18業種のうち12業種が拡大、5業種が縮小と回答した(注3)。会計年度末を迎える中で、経営・サポート21 トランプなどが拡大したことなどが寄与した。

ISM21 トランプ業調査委員会のスティーブ・ミラー会長は結果について「データが​​示す力強い成長は企業のコメントでもおおむね支持されているが、政治的不確実性に対する懸念は前月よりも広がっている。サプライチェーンは安定し続けているが、価格設定は依然として課題だ。利下げは歓迎されたが、ほとんどの業界で人件費と労働力の確保が引き続き懸念されている」と述べた。企業からは、東海岸での港湾ストの影響を懸念する声(宿泊・飲食21 トランプ)や、製造業と同様に大統領選の結果を待っているとの声(卸売り、専門・科学技術21 トランプ)が寄せられた。

(注1)商務省発表の2022年第4四半期(10~12月)から2023年第3四半期(7~9月)までのGDPの数値に基づき、産出額の大きい6セクターの化学、輸送機器、食品・飲料・たばこ、コンピュータ・電子製品、一般機械、金属加工を指す。

(注2)拡大したと回答した業種は、石油・石炭、食品・飲料・たばこ、繊維、家具、その他製造業。縮小したと回答した業種は、印刷、プラスチック・ゴム、木材、アパレル・皮革、一次金属、輸送機器、非金属鉱物、電気製品、紙、一般機械、化学、金属加工、コンピュータ・電子製品。

(注3)拡大したと回答した業種は、不動産、経営・サポートサービス、宿泊・飲食サービス、鉱業、行政、ヘルスケア・社会的扶助、金融・保険、建設、運輸・倉庫、21 トランプ、教育サービス、公益サービス。縮小したと回答した業種は、その他サービス、農林水産、卸売り、専門・科学技術サービス、小売り。

(加藤翔一)

(米国)

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