米エネルギー省と農務省、ミシガン州パリセーズ原発再開に総額28億ドル支援
(米国)
ニューヨーク発
2024年10月02日
米国エネルギー省(DOE)は9月30日、2022年に経済的な理由で運転を停止していたミシガン州のパリセーズ原子力発電所〔発電容量800メガワット(MW)〕を再開するため、ホルテック・インターナショナル(本社:フロリダ州ジュピター)に最大15億2,000万ドルの融資をすることを発表した。同支援はインフレ削減法(IRA)の下のエネルギーインフラ再投資(EIR)プログラム(注)に基づく。
2022年5月の閉鎖後、同年6月にホルテックが原子力発電所を買収したことを受けて、同発電所は地域社会、州、連邦のパートナーからの協力や支援によって、米国で再稼働に成功した最初の原子力発電所となる。今後、2025年10月までに再稼働を目指す。
本発電所の再稼働にあわせ、周辺に位置するミシガン州、イリノイ州、インディアナ州の農村地域が本発電所から電力を購入できるよう、農務省(USDA)から13億ドルを超える助成金が提供される予定。本助成金は、農村地域のクリーン電力への移行を支援するためにIRAによって措置されたプログラム〔The Empowering Rural America(New ERA)program〕に基づいて支出される。ホルテックとパリセーズ原子力発電所は既にウルバリン電力協同組合とフージャー・エナジーという2つの農村電気協同組合との間で長期的な電力購入契約を締結しており、同助成金はこれらの協同組合に付与され、消費者には電気料金の値下げというかたちで還元される。
なお、パリセーズ原子力発電所の所在するミシガン州は2050年までに100%カーボンニュートラルを実現するという目標(ミシガン州気候計画)を掲げており、この実現に向けて原子力発電を含む再生可能エネルギーを今後60%まで引き上げていく予定だ。この観点から、本発電所の再稼働については、グレッチェン・ウィットマー知事(民主党)が2022年9月にDOEに対して書簡を送付するなど、積極的に働きかけを行ってきた。今回の発表を受けて、同知事は「本原発の再稼働は、エネルギーコストを低く抑え、国内のエネルギー生産を強化し、ミシガン州の将来の経済発展に向けた競争力を確保することにつながる。私たちは米国史上初の再稼働に成功した原子力発電所として、全米屈指のクリーンエネルギー労働基準と、より迅速に再生可能エネルギーを構築するためのツールを武器に、ミシガン州で未来をリードしていく」と述べ歓迎した。
原子力発電は、温室効果ガスを排出せずに24時間稼働できるため、気候変動対策と増加する電力需要を両立させるための手段として再評価されつつある。特に、データセンターにおける電力需要に応える有力な電源として期待されており、2024年に入ってからも2019年に稼働停止していたペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所1号機を再稼働し、その全発電量(835MW)を20年間にわたってマイクロソフトに供給することが発表されている(米スリーマイル島原発を再稼働、ブラック)。今後もこうした原子力発電所の再稼働の動きが続くのか注目される。
(注)2005年のエネルギー政策法に基づいて設立され、2021年のインフラ投資雇用法および2022年のインフレ削減法(IRA)(バイデン米大統領、ブラック ジャック)によって拡充されたタイトル17(クリーン・エナジー財政プログラム)の一部。また、稼働を停止したエネルギーインフラの再稼働や、稼働中のインフラの改修を支援するプロジェクトに対する融資プログラム。
(藤田ゆり、加藤翔一)
(米国)
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