持続可能な低炭素モビリティー促進する「未来の燃料法」制定
(ブラジル)
サンパウロ発
2024年10月16日
ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は10月8日、持続可能な低炭素モビリティーを促進するための法律第14,993号(通称:未来の燃料法)を承認した。翌9日に官報で公示され、即日施行された。同法は、運輸部門の脱炭素化を目的に、バイオ燃料の利用拡大と新技術開発を促進するための包括的な枠組みを構築するもの。アレシャンドレ・シルベイラ鉱山エネルギー相は10月4日にパラナ州フォス・ド・イグアス市で開催されたG20エネルギー移行大臣会合(ブラック ジャック トランプ)の記者会見で、同法がブラジル政府のエネルギー移行戦略の中心にあると強調した。
同法により、ガソリンへのエタノール混合率とディーゼルへのバイオディーゼル混合率に新たな規制が導入された(注1)。これまでガソリンへのエタノールの混合率の義務値は18%~27.5%の範囲で定めるとされており、2015年以降は27%が義務値とされていた。法律第14,993号では、混合率の義務値は27%に据え置いたが、義務値の可変範囲を22%~35%の間に拡大した。また、現時点で14%となっているバイオディーゼル混合率は、2025年3月1日から2030年3月1日まで毎年1ポイントずつ上昇する予定だ。
さらに、バイオ燃料の生産・利用拡大に向けて、次の3つの新プログラムが導入された。
1つ目が、国家持続可能な航空燃料(SAF)プログラム(ProBioQAV)だ。2027年1月1日以降、国内線を運航する航空会社に対し、SAFの使用によって温室効果ガス排出量(GHG)を年1%削減する義務が生じる(注2)。この義務削減率は2037年3月1日まで毎年1ポイントずつ上昇する予定だ。2つ目が、国家グリーンディーゼルプログラム(PNDV)だ。グリーンディーゼルの研究、生産、販売、利用を促進することを目的としている。このプログラムでは、ディーゼルへのグリーンディーゼル混合が義務化されている。最小容積比率が3%を超えない範囲で、今後、混合率が設定される(注3)。3つ目は、国家天然ガス製造・輸入事業者の脱炭素化とバイオメタン奨励プログラムだ。天然ガス製造・輸入事業者を対象に、GHG削減率が設定される。2026年1月1日以降、天然ガス製造・輸入事業者には1%の削減率が課され、以降、毎年削減率が再設定される。GHG削減を実現するため、天然ガスにバイオメタンを混合する必要がある。
また、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)を行う事業者に対して、安全性や事業許可制度に関する規制も、法律第14,993号に盛り込まれている。詳細は未定だが、鉱山エネルギー省傘下の国家石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)が管轄の機関になる予定だ。
これらの施策を通じて、ブラジルは2037年までに7億500万トンのCO2排出量を削減できると見込まれている。
(注1)ブラジルでは、ガソリンへのエタノール混合とディーゼルへのバイオディーゼル混合が法律で義務付けられている。混合率は大統領府傘下の国家エネルギー政策評議会(CNPE)が設定する。
(注2)排出削減義務の計算の基礎は、全ての運航で化石燃料が使用されたと仮定した場合の、航空会社が該当年度に行った国内線に由来する排出量とする。
(注3)グリーンディーゼルは、バイオディーゼルと同様に、植物油や鉱物油脂を原料にするが、製造方法が異なり、従来のディーゼルと化学組成がほぼ変わらないため、混合比を気にせず使用可能となっている。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル)
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