米トランプ氏、USMCA見直しで、中国によるメキシコ経由の自動車部品の無税での輸出を制限と表明

(米国、メキシコ、カナダ、中国)

ニューヨーク発

2024年10月15日

11月5日の米国大統領選挙の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領は10月10日、デトロイト・エコノミック・クラブで講演し、2026年に予定されている米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しで、中国などの国がメキシコを経由して自動車部品を無税で輸出することを防ぐ文言を盛り込むと述べた。現行のルールでは、メキシコでUSMCAの原産地規則を満たす生産や加工を行えば、生産した企業の国籍にかかわらず、無税で米国へ輸出できる。

米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(10月11日)によると、トランプ氏は再選されれば、「私が盛り込んだUSMCAの6年ごとの再交渉条項(renegotiation provisions)を発動する意向を正式にメキシコとカナダに通知する」「中国やその他の国が自国の製品や自動車部品をメキシコ経由で米国に無税で密輸し(smuggle)、米国の労働者やサプライチェーンに損害を与えることがないよう、積み替え(transshipment)に対する強力な新しい保護措置を講じるつもりだ」と述べた(注1)。USMCAは発効してから6年後に見直しを行い、参加する3カ国が合意すれば、さらに16年間継続すると定められている。民主党の大統領候補カマラ・ハリス副大統領も9月に、米国の労働者を守るためにUSMCAの見直しを活用すると述べていた(2024年9月30日記事参照)。米国では、メキシコを経由した中国製の自動車・同部品の輸入拡大や、将来的な電気自動車(EV)の流入拡大に対する懸念が強く、こうした懸念は党派によらず共有されている。

他方、産業界は米国国際貿易委員会(ITC)が行った公聴会で「2026年に予定されている協定の見直しがさらなる変更や、産業界が新たな要件に再び対応する必要性につながらないことを期待している」「非現実的なほど厳しいルールは逆効果になりかねない」と述べるなど、原産地規則の見直しに否定的だ(関連オンライン ブラック ジャック)。また、カナダのメアリー・エング輸出振興・国際貿易・経済開発相は、見直しは競争力や強靭(きょうじん)性を強化するものであって、「再交渉ではない」と述べるなど(注2)、参加国も慎重な姿勢を示している(関連ブラック ジャック 賭け)。

(注1)USMCAによる特恵関税のメリットを享受するには、域内で一定程度の加工を行う必要があり、メキシコでの単純な「積み替え」だけでは、この要件を満たせない。また、1974年通商法301条に基づく対中追加関税も、中国原産品を対象にしているため、積み替えだけでは追加関税を回避できない。

(注2)トランプ氏は「再交渉」と述べたが、USMCAの協定文上は、エング氏が指摘するとおり、「見直し(joint review)」となっている。

(赤平大寿)

(米国、メキシコ、カナダ、中国)

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