米テキサス州の連邦上院議員候補者討論会、現職の上院・下院議員が応酬

(米国)

ヒューストン発

2024年10月28日

米国テキサス州ダラスの地元テレビ局WFAAは10月15日、11月5日の大統領選挙に併せて行われる連邦上院議員選挙でテキサス州選出候補の、現職のテッド・クルーズ連邦上院議員(共和党)と、コリン・オールレッド連邦下院議員(民主党)による討論会を開催した。同州連邦上院議員候補による討論会は今回が唯一の見込みだ。

1時間の討論会では、司会者より、有権者の関心が高い課題について両候補者へ質問し、60秒から90秒以内に主張あるいは反論する流れで行われた。人工妊娠中絶、不法移民対策、トランスジェンダー、経済、イスラエル・ハマス紛争など多岐にわたる議論が広がった。

クルーズ氏は終始、オールレッド氏とカマラ・ハリス副大統領(民主党)をひもづけて批判した。一方、オールレッド氏は、テキサス州が歴史的な寒波に被災した折、クルーズ氏がメキシコのカンクンへ旅行していたことを繰り返し引き合いに出し、2期にわたり上院議員を務めながら功績は少なく、民衆が必要な時には居なかったと応酬した。

国境警備について、クルーズ氏はオールレッド氏が国境警備法案に反対票を入れたと主張したが、オールレッド氏も支持した連邦政府の国境措置強化法案(注1)は、共和党の上院議員らによって否決となった。トランスジェンダーの話題では、生物学上の男性が女性のスポーツ競技へ参加することを禁止する法案に、オールレッド氏が反対票を投じたことにクルーズ氏が言及すると、オールレッド氏は「男性の女性競技への参加は支持しないが、差別はされるべきではない」と主張した。ハマスによるイスラエル攻撃と米軍の姿勢について、オールレッド氏がイスラエルとウクライナ、台湾への支援などを定めた国家安全保障に関する緊急追加予算法案にクルーズ氏は反対票を投じたと批判。クルーズ氏は、同法案はガザ地区へ資金が流れる恐れがあったと反論した。

人工妊娠中絶について、現在のテキサス州保健安全法第170条は、母体の生命や健康が危険にさらされない限り中絶を認めていない。また、2021年9月施行の「テキサス州ハートビート法」によれば、胎児の心拍が確認できるとされる妊娠6週目以降の人工妊娠中絶は禁止されている。クルーズ氏は、未成年者の中絶において医師に保護者への通達を義務付ける州法や、妊娠8カ月以降の中絶禁止をテキサス州民が支持していると主張し、オールレッド氏がそれらの法案に反対票を投じたと批判した。これに対しオールレッド氏は、医療処置として必要な中絶のために他州へ渡った患者や、医療処置がすぐに受けられず将来不妊となる可能性がある患者を例に挙げ、約2万6,000人が望まない出産を強いられたと説明。さらにオールレッド氏は、「言葉そのものは『生命を尊重する』という意味のプロライフ(注2)を掲げながら、女性の健康を軽視し、胎児以外の生命を尊重しない現状は矛盾している」と視聴者に訴えた。

テキサス州選出の連邦上院議員枠は2人で、過去30年以上、共和党員が務める。11月5日の選挙では、6年間を任期とする連邦上院議員の1枠が決まる(注3)。事前投票が可能となった10月21日には、登録済み有権者の4.28%にあたる79万6,297票が投票した。

(注1)2024年5月23日、国境を越える不法移民が一定数を超えた場合に大統領が一時的に国境封鎖できる権限などを与える国境措置強化法案を米連邦議会上院が否決した(バイデン米大統領、オンライン)。

(注2)人工妊娠中絶については、胎児の生命を尊重するプロライフ(pro-life)と、女性の選択権を尊重するプロチョイス(pro-choice)の立場に大別される。

(注3)もう1枠の選挙は2026年の予定。

(キリアン知佳)

(米国)

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