行政長官の施政報告、新成長分野の促進と経済活性化に向けた取り組み

(香港、中国)

香港発

2024年10月31日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)の李家超(ジョン・リー)行政長官は10月16日、就任後3回目となる施政報告(施政方針演説、以下、報告)を行った(アルコール度数30%超の酒類、ブラック行政長官の施政報告、カード参照)。

報告では、主に「繁栄実現に向けた改革と変化の受容」「『一国二制度』の着実な実施とガバナンス体制の強化」「国際金融・海運・貿易センターとしての地位の確固・強化」「現地に合わせた『新たな質の生産力(注1)』の開発」「国際人材ハブへ」「成長エンジンとしての北部都会区の推進、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の連携深化」についての演説が行われた。

李行政長官は、「繁栄実現に向けた改革と変化の受容」では、中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議で採択された「改革のさらなる全面深化と中国式現代化の推進に関する決定」において、香港は「一国二制度」の強みを十分に活用し、国際金融、海運、貿易の中心地としての地位を強化・向上させ、人材のハブとなり、対外開放の役割を発揮し、粤港澳大湾区内での協力を深める立場を期待されていると述べた。

「『一国二制度』の着実な実施とガバナンス体制の強化」では、教育・科学技術・人材委員会、低空経済(注2)、観光ホットスポットの開発、シルバー経済(高齢者に重点を置いた経済活動)については分野横断的に政策間の調整を進めると示した。また、重要インフラ業者に対し、コンピュータシステムを保護し、サイバーセキュリティーの課題に対する耐久性を強化するため、2024年内に関連法案を提出する予定と示した。

「国際金融・海運・貿易センターとしての地位の確固・強化」では、国際的なコモディティ取引センターとしての地位強化、投資促進を目的とした投資移民制度「新資本投資参入者スキーム」において、5,000万香港ドル(約9億5,000万円、1香港ドル=約19円)以上の物件であれば住宅用不動産も投資対象として許可するとし、従来の条件を緩和した。

「現地に合わせた『新たな質の生産力』の開発」では、国際的な科学技術センターとして、研究費の増額、投資拡大を行う、生命・健康技術、人工知能(AI)・ロボット、半導体・スマートデバイス、先端材料、新エネルギー分野に100億香港ドルのファンド・オブ・ファンズを設立する。また、低空経済発展のため、ドローンを活用した配送、調査、ビルメンテナンス、空撮、救助などへの応用や関連規制の改正、中国本土間との飛行ルートの共同開設や出入国・関税手配の促進を行う。

「国際人材ハブへ」では、「トップタレント・パススキーム」の対象大学に13校を追加して198大学に拡大、同スキームの最初のビザ期間を2年から3年間に延長する。

「成長エンジンとしての北部都会区の推進、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の連携深化」では、粤港澳大湾区の個人ブラック ジャック カード ゲームの越境流通に関する標準契約を全ての分野に拡大し、粤港澳大湾区での医療協力を拡大する(添付資料表参照)。

施政報告の詳細は香港政府のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。

(注1)中国中央電視台(CCTV)の解説では、技術の革命的なブレークスルー、生産要素のイノベーティブな配置、産業の深い転換・レベルアップにより生み出される先進生産力とされる。2023年9月11日の人民網日本語版では「従来型の生産力とは異なり、新たな分野に及び、技術水準が高いもので、イノベーション主導であることがそのカギとなる」とされている。

(注2)空飛ぶクルマやドローンなどの手段を用いて、低空飛行による乗客・貨物輸送を事業化し、社会変革をもたらす活動を指す。

(松浦広子)

(香港、中国)

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