米商務省、中国とロシアが関係するコネクテッドカーの輸入または販売を禁止する規則案を発表

(米国、中国、ロシア)

ニューヨーク発

2024年09月24日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月23日、中国またはロシアの企業などによって製造、開発された、特定のハードウエアとソフトウエアが搭載されたコネクテッドカー(注1)やそれら部品の販売または輸入を禁止する規則制定案公告(NPRM)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。正式には9月26日付で、官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で公示する。

米国のジョー・バイデン大統領は2月に商務長官に対し、中国などの懸念国の21 トランプ通信技術を利用している自動車の安全保障上のリスクを調査し、必要な対応を取るよう指示していた。これを受けBISは3月に、コネクテッドカーに不可欠な21 トランプ通信技術サービス(ICTS)取引がもたらす、安全保障へのリスクに対してパブリックコメントを求める規則策定案事前公告(ANPRM)を公示していた(バイデン米大統領、ブラック)。

今回の発表でBISは、外国の敵対者が車両接続システム(VCS)と自動運転システム(ADS)に悪意を持ってアクセスすることで、機密性の高いデータの収集や米国の道路を走る車の遠隔操作が可能になるとして安全保障上のリスクを挙げ、中国とロシアが関与するVCSとADSの輸入または販売を禁止する規則案を提示した。VCSは具体的には、テレマティクス制御ユニット、ブルートゥース、セルラー、衛星、Wi-Fiモジュールなど車両が外部との通信を可能にする一連のシステム、ADSは、高度に自律化された車両が運転手なしで運転できる(注2)ための部品などが挙げられた。中国やロシアの所有、支配下にある、または司法権が及ぶ、あるいはこれらの国からの指示に従う者によって設計、開発、製造、供給される場合にも、今回の規則案が適用される。

その他、実務的な手続きとしては、VCS ハードウエアの輸入者やコネクテッドカーの製造者に対して、禁止されている取引に関与していないことを示す適合宣言書(Declarations of Conformity)のBISへの提出が提案されている。ただし、禁止対象の取引であっても、VCS ハードウエアが試験目的のみで輸入される場合、または輸入されたコネクテッドカーの一般道路を運転する期間が年間30日未満の場合などは、一般許可として取引が認められることもある。BISはそのほか、個別許可といったかたちで例外的に認められることがあると提案している。

今回の規則案は、ソフトウエアは2027年モデルから、ハードウエアは2030年モデルから、モデル年のないもの対しては2029年1月1日からの適用が提案されている。なお、自動車、トラック、バスなど、車輪のついた全ての路上走行車両に適用されるが、農業用車両や採掘用車両など、公道で使用されない車両は適用対象外となる。

BISは今回提案した規則案に対して、パブリックコメントを受け付ける。連邦政府のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(ID:BIS-2024-0005)からオンラインで提出が可能で、公示されてから30日後に締め切られる。

米国政治専門紙「ポリティコ」(9月23日)によれば、商務省のジーナ・レモンド長官は、「中国やロシアが、運転手、子供の通う学校、主治医の住所などのデータを収集できれば、米国人を極端に脆弱な状況に置くことになる」「外国の敵対者が、米国で稼働中の全ての車両を同時に停止または制御下に置き、衝突や道路の封鎖などを引き起こす可能性がある」と、今回の規則案導入の必要性を述べた。同紙はまた、これらの規則案が施行されれば、ドイツ、韓国、日本などの第三国のメーカーが、米国に輸出する自動車に規則案の対象となる中国やロシアの部品を使用している場合、新たなサプライヤーを探さざるを得なくなると指摘している。

(注1)BISは官報で、「コネクテッドカー」の定義を「機械力によって運転または牽引され、主に公道、道路、高速道路での使用を目的として製造された車両で、車載ネットワークハードウエアと自動車用ソフトウエアシステムを統合し、専用短距離通信、携帯電話通信接続、衛星通信、またはその他の無線スペクトル接続を介して他のネットワークやデバイスと通信する車両」と提案している。

(注2)標準化団体 SAEインターナショナルが定める規格J3016で定義された自動化レベル3、4、5に相当する。

(赤平大寿)

(米国、中国、ロシア)

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