8月の米ISM景況感指数、大統領選に伴う政策変更リスクや高金利が投資や雇用を下押し
(米国)
ニューヨーク発
2024年09月06日
米国サプライマネジメント協会(ISM)は9月3日に8月の製造業景況感指数を、9月5日に8月のサービス業(非製造業)景況感指数をそれぞれ発表した。業種によってバラつきはあるものの、米国大統領選挙に伴う政策変更リスクや、高金利を忌避した投資控えの傾向が散見される内容となっている。
製造業景況感指数は47.2と、前月(46.8)からわずかに改善したものの、ブルームバーグによる市場予想(47.5)をやや下回り、5カ月連続で基準値の50を割り込んでいる。
項目別では、指数の構成要素のうち生産(44.8)、新規受注(44.6)、雇用(46.0)の3項目で50を下回り、依然として短期的な見通しは低調となっている。業種別では、縮小と回答した業種の数(12業種)は前月(11業種)からわずかに増加、産出額の大きい6大業種(注1)も4業種で縮小と回答している(注2)。
ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は結果について「現在の金融政策と選挙の不確実性により、企業が資本と在庫への投資に消極的なことから、需要は引き続き低迷している。生産は7月に比べて低下し、収益性にさらなる圧力をかけている」と指摘した。企業からも「ビジネスは冷え込んでおり、選挙が終わるまで回復は見込めない」(紙)、「顧客は設備購入のための資金拠出は可能なものの、選挙を巡る不確実性からプロジェクトを2024年第4四半期まで保留しているようだ」(一般機械)、「高金利により、家具などの高額な裁量的消費に対する支出が抑制されており、業界の販売見込みに影響を及ぼしている。ただし、潜在的な需要は高まっている」(木材)など、投資控えの影響を指摘する声が寄せられた。
一方、8月の非製造業景況感指数は51.5と、前回からほぼ横ばいで推移した。市場予想の51.3をわずかに上回った。
項目別では、ビジネス活動(53.3)、新規受注(53.0)、雇用(50.2)が前月に続いて50を上回ったが、雇用については採用凍結などを指摘するコメントも寄せられており、緩やかな減速傾向にあるもようだ。
業種別では、全18業種のうち10業種が拡大、7業種が縮小と回答した(注3)。金融・保険やヘルスケア・社会的扶助など好調さを報告する業種も複数みられ、全体としては堅調なものの、「経済的、政治的に不確実な時期に企業がコスト管理に努めているため、従業員、請負業者、コンサルタントの雇用は引き続き減少している」(経営・サポートサービス)、「住宅市場は借り入れコストの上昇により引き続き低迷している」(建設)など、製造業と同様の要因で下押し圧力が働いているようだ。
(注1)商務省の発表している2022年第4四半期(10~12月)から2023年第3四半期(7~9月)までのGDPの数値に基づき、産出額の大きい6セクターの化学、輸送機器、食品・飲料・たばこ、コンピュータ・電子製品、一般機械、金属加工を指す。
(注2)拡大したと回答した業種は、一次金属、石油・石炭、家具、食品・飲料・たばこ、コンピュータ・電子製品。縮小したと回答した業種は、繊維、印刷、非鉄金属、プラスチック・ゴム、電気製品、金属加工、輸送機器、木材、一般機械、紙、化学、その他製造業。
(注3)拡大したと回答した業種は、娯楽・レクリエーション、鉱業、運輸・倉庫、その他サービス、カジノ ゲーム 無料、ヘルスケア・社会的扶助、金融・保険、行政、教育サービス、公益サービス。縮小したと回答した業種は、農林水産、小売り、建設、卸売り、宿泊・飲食サービス、経営・サポートサービス、専門・科学・技術サービス。
(加藤翔一)
(米国)
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