新疆ウイグル自治区政府が米国の制裁に反対決議、企業の発展を支援
(中国、米国)
北京発
2024年09月05日
中国の新疆ウイグル自治区人民代表大会常務委員会は9月2日、「米国の新疆ウイグル自治区に関する制裁に断固として反対し、制裁を受けた企業と産業の発展を支援する決議」を発表した。米国の「ウイグル強制労働防止法」(2022年6月21日記事参照)が新疆ウイグル自治区(新疆)の企業の権利と発展の利益、各民族の生存権、発展権、民族感情を著しく損なっており、これに断固反対するとした。
決議では、新疆の現状について、労働者は法律に基づいた権利を保障され、テロリズムの抑制などで治安も改善し、人々の幸福感は高まっており、国際的にも高い評価を得ているとした。米国はこれらの事実を無視し、中国の貧困支援策や農村の就業促進を「強制労働」として攻撃しているとした。
また、米国の「ロングアーム管轄」(注)は重大な国際法違反であり、市場のルールと商業的モラルに反し、グローバルサプライチェーンの安定を破壊し国際貿易の秩序を乱すもので、中国の発展を押さえつけようとしていると非難した。
米国に対しては、新疆問題を利用したデマをまき散らし、新疆の人権状況を中傷することをやめるよう求めた。その上で、新疆全体が即座に行動を起こし、制裁を受けた企業および関連企業を支援するとした。新疆政府は法律上の支援を与えるほか、各種プラットフォームを活用し、「ウイグル強制労働防止法」などの制裁が悪辣(あくらつ)なたくらみであることを広める。
その他、司法機関は制裁を受けた企業の法的な権益の保護を支援し、公平・公正で国際的な市場環境と貿易環境を維持し、制裁を受けた企業が国際法と関連の国際ルールに基づき、米国政府などに対して制裁により生じた損害の賠償を求めることを支援する。
また、制裁を受けた企業は、法律を武器として米国の制裁に積極的に対応すべきであるとした。その上で、技術イノベーションや製品の高付加価値化などにより競争力を高め、新たな発展の道を切り開くことを求めた。
ウイグル強制労働防止法では、2022年6月の施行以降、(1)アパレル、(2)綿、(3)ポリシリコンを含むシリカ製品、(4)トマトが優先執行対象だったところ、2024年7月9日には(5)アルミニウム、(6)ポリ塩化ビニル、(7)水産品が追加された。2022年6月~2024年6月の間に34億5,554万ドル相当の9,128件の貨物が差し止められたとされる(2024年7月11日記事参照)。
(注)中国外交部によれば、「ロングアーム管轄」とは、米国の法律において、司法機関が域外に住所・居住地を有する人員あるいは実体(組織・団体など)に対して行使する管轄としている。また、国際法上は、一国が域外の人員あるいは実体に対して管轄を行使する場合、一般に該当人員あるいは実体、あるいはその行為と当該国の間に真実かつ十分な関連があることを要するとしている一方、米国は行使の基準に「最低限の関連」を採用しており、ロングアーム管轄行使のハードルを引き下げているとしている。
(河野円洋)
(中国、米国)
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