物流の現状について、阪急阪神エクスプレスのダッカ所長に聞く

(バングラデシュ)

ダッカ発

2024年09月12日

バングラデシュでは、シェイク・ハシナ首相が辞任して1カ月が経過し、暫定政権下で経済の立て直しを進めている。政変の影響を受けた現地物流・通関の状況について、阪急阪神エクスプレスの石原直樹ダッカ駐在員事務所長に聞いた(インタビュー:9月11日)。概要は次のとおり。

(問)現在の国内物流の状況は。

(答)7月に始まった政治的混乱と、8月23日ごろから発生したバングラデシュ南東部での洪水被害は、国のサプライチェーンに大きな影響を及ぼした。洪水被害を受けていたダッカ~チョットグラムを結ぶ幹線道路は、9月に入って大部分が正常な状態に戻りつつある。

(問)現在の国際物流、通関の状況は。

(答)前年から発生している中東情勢悪化による物流混乱の影響をバングラデシュも受けており、接続港のシンガポール港などでの遅延が発生していた。そのような折、今回の政治的混乱によってさらなる物流混乱が生じた。バングラデシュのコンテナ輸送の90%以上を担うチョットグラム港のコンテナ保管能力は最大で約5万3,000TEU(注)だが、8月中旬の最も混乱していた時期には、保管量が約4万4,000TEUに達し、円滑な運営のために理想とされる3万TEUを大きく上回っていた。9月に入り、保管量は約4万TEUまで改善されたが、まだ混雑状況は解消されていない。

チョットグラム港での船舶の沖待ち時間も最長9日に達したことがあったが、現在は4~5日に短縮されている。ただ、通常期に比べると依然として長い。これにより、チョットグラム港発着のフィーダー船スケジュールに遅延が生じ、接続港のシンガポール港などで予定の本船に接続できない事例も見られている。

現在最も懸念されるのは、ダッカ空港発の航空運賃の高騰だ。日本向けの航空運賃は平時の3~5倍に跳ね上がっている。主にアパレル製品の納期遅延に対応するため、航空需要が高まっている一方で、旅客需要の減少を受け、タイ国際航空を含む一部の航空会社は減便や機材の小型化を進め、貨物スペースの供給量が減少している。香港向けに貨物便を運航していた香港貨運航空も、機材繰りの影響で週5便から週1便に減便している。運賃が相対的に高い欧米向けに貨物スペースが優先的に割り当てられていることもあり、日本向けのスペース確保は困難を極めている。なお、空港や港での輸出入通関については、現在平常どおり手配が可能だ。

(問)現地日系企業にとっての課題は。

(答)もともと、バングラデシュから日本への海上輸送リードタイムは中国や東南アジア諸国に比べて長いが、今回の物流混乱により、サプライチェーン管理がより重要な課題となっている。現状を日本側バイヤーや社内外の関係者に適切に説明するためにも、物流状況の定期的な確認が必要となるだろう。さらに、海上輸送や航空輸送だけでなく、海上輸送と航空輸送を組み合わせた複合輸送や、近隣国への陸送からの航空輸送など、多様な物流上の事業継続計画(BCP)対応の準備も求められる。これら物流ブラック ジャック 確率の発信や代替案の提案は、バングラデシュに進出している日系物流企業にとっても重要な課題だ。

(問)今後の見通しは。

(答)航空運賃の高騰や港湾の混雑は一時的な状況とみているが、その収束時期の見通しは立てにくい。最低でも数週間は混雑が続くと思われるが、少しずつ状況が改善することを期待している。中東情勢の悪化による欧州向けを中心とした世界的な物流混乱も引き続き発生しているため、チョットグラム港からの主な接続港であるコロンボ港、シンガポール港、クラン港の状況にも引き続き注意する必要がある。

写真 阪急阪神エクスプレスの石原直樹ダッカ事務所長(本人提供)

阪急阪神エクスプレスの石原直樹ダッカ事務所長(本人提供)

(注)TEU(Twenty-foot Equivalent Unit)は、20フィートのコンテナ1本分の容量。40フィートコンテナをTEU換算すると2TEUとなる。

(安藤裕二)

(バングラデシュ)

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