米小売業者、年末商戦で約52万人雇用の見通し、2009年以降2番目の低水準

(米国)

ニューヨーク発

2024年09月26日

米国の再就職支援会社チャレンジャー・グレイ&クリスマスは9月19日、2024年の年末ホリデー商戦期間(注1)の小売業者による臨時雇用者数は52万人になる見込みと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この水準は2022年の50万9,300人を上回るものの、2009年以降2番目に低い水準になると予想している。

同社の発表によると、米国の小売業者は年末商戦期間に向けて、これまでに約33万4,850人(注2)の雇用計画を発表している。雇用計画は最近の各社業績に応じてまちまちだ。大規模な値引きセールを背景として2024年第2四半期(4~6月)に売り上げを伸ばした小売り大手のターゲットは9月16日、店舗と配送施設で約10万人の労働者をホリデー期間に雇用すると発表、過去4年間と同水準の規模を予定している。他方、ネット通販などの競争激化で売り上げが伸び悩んでいる老舗百貨店メイシーズは9月19日、同社の傘下にある各店舗と配送施設で3万1,500人以上の季節雇用者を採用すると発表したが、この水準は2023年の約3万8,000人の雇用者数を下回っている。

チャレンジャー&グレイのシニアバイスプレジデント、アンドリュー・チャレンジャー氏は「今回の予測は、雇用の伸びが鈍化し、消費者が支出を引き締めていることを考慮している」とした上で、「特に景気が急速に冷え込み、消費者がこの年末の買い物を控えることになれば、小売業者はそれほど多くの労働者を必要としないだろう」と述べた。同氏はまた「小売業と同様に、輸送や倉庫業でも、継続的な人員配置の安定化や自動化の進展により、例年のような季節雇用の劇的な急増はないだろう」との見方を示した。

年末商戦は通常、米国の小売業者の年間売上高の半分以上を占め、年間事業の成果を大幅に左右する重要な時期だ。2024年は消費者の倹約志向が広まる中で、小売り各社はより多くの買い物客を引き寄せるため、プロモーションを前倒しで計画し、戦略的な取り組みを予定している。インフレ下で価格に敏感な消費者に対応して、ウォルマートはホリデー商戦のセールイベント「ウォルマート・ホリデー・ディールズ」を例年より数週間早く実施すると発表した。アマゾンやターゲットなども10月上旬から大規模なセールイベントを実施すると発表しており、ライバル各社の拡販が時期を重ねて展開される。

マスターカードによると、2024年の年末商戦期間(11月1日~12月24日)の米小売売上高は前年同期比3.2%増になると見込み、2023年の伸び率(3.1%増)をわずかに上回ると予想している。2024年は感謝祭(11月28日)からクリスマスまで27日間で、例年の商戦期間よりも短いため、各社が早い段階でプロモーションを打ち出している可能性がある。同社は現状の消費環境について「消費者はプロモーションや割引を期待し、求めている。割引やプロモーションはもはや『あればいい』ものではなく、必要不可欠なものになっている」と指摘する(ロイター9月19日)。

(注1)毎年11月第4木曜日の感謝祭(Thanksgiving Day)からクリスマスまで続く。前後の週末には長めの休みを取る人も多く、感謝祭翌日には日本でも知られるようになったブラックフライデーセール(値下げによる売り上げ増で企業が黒字になるが由来)が各小売店で繰り広げられる。

(注2)9月20日時点の数値で、今後も継続的に更新される予定。

(樫葉さくら)

(米国)

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