フォレストシティを金融特別区へ、2025年第1四半期までに新たな優遇措置
(マレーシア、シンガポール)
クアラルンプール発
2024年09月24日
マレーシア政府は9月20日、フォレストシティ金融特別区(SFZ)の立ち上げを発表した(財務省フェイスブック、マレー語のみ)。2025年第1四半期までに、富裕層の資産管理や運用サービスを提供するファミリーオフィスへの法人税減免を柱とする、各種優遇措置を適用する。フォレストシティは、ジョホール州イスカンダル地域で、王室の支援も受けた地場企業と中国の不動産大手カントリー・ガーデン・ホールディングスが共同で進める1,000億ドル規模の大型都市開発事業で、4つの人工島で構成される。
2023年8月にアンワル・イブラヒム首相が、フォレストシティにSFZを設立する構想を発表していた。この際、SFZで就労する知識労働者に対し特別所得税率15%を適用するなど、イスカンダル地域の優遇措置をフォレストシティにも拡大するとしていた。今回、アミル・ハムザ・アジザン第2財務相は、同特別所得税のほかにも追加のインセンティブを発表。2025年第1四半期までにマレーシアとして初めて、ファミリーオフィスの法人税を免除すると明らかにした。同相によれば、現在、世界に8,030あるファミリーオフィスは、2030年までに75%増加し、管理対象の推定総資産も3兆1,000億ドルから5兆4,000億ドルに拡大する見込みだ。同相は、ファミリーオフィスの設立促進により投資家層が拡大し、民間資本が高成長・高付加価値セクターに流入するとの期待を示した。
SFZではまた、グローバルビジネスサービス、金融テクノロジー、外国決済システム事業者などを誘致すべく、0~5%の優遇法税率を適用する。加えて、金融業は移転費用の特別控除、産業用建物手当の強化、源泉徴収税の免除といった措置を享受できるとみられる。外資系銀行に対しては、SFZ内での支店増設を容認し、外貨建てオフショア借り入れや外貨資産への投資に関する外国為替規制を緩和する見込み。要件の詳細は現時点では未発表だ。
国内の主に不動産業界は、新たなSFZに好意的だ。9月21日付スターは、「ファミリーオフィス、フィンテック、シェアードサービスの拡大、およびデジタル化が進展する中、優遇措置の導入は絶好のタイミングだ」「フォレストシティのSFZは、ジョホール・シンガポール経済特別区(JS-SEZ)(注)を補完できる。金融特区と経済特区の双方が整備されることで、ジョホール州はマレーシアの成長センターになる」などのコメントを報じた。
他方、効率性と透明性を確保するための法的枠組み、既存の地場人材プールのスキルアップや再教育、さらには生活の質を保障する十分な環境も重要との指摘もあった。
(注)マレーシアとシンガポール両国は、2024年1月にJS-SEZの共同開発に関する覚書を締結()。2024年末までに最終合意が締結される予定。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、シンガポール)
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