ASEAN経済共同体(AEC)の5カ年戦略計画が議論
(ASEAN、タイ、ラオス、マレーシア、日本)
バンコク発
2024年09月04日
第46回ASEAN経済統合ハイレベルタスクフォース(HLTF-EI)会合が8月14日、ラオスの首都ビエンチャンで開催された。今回の会合では、2025年に終了となるASEAN経済共同体(AEC)ブループリント2025の後継となる「AECポスト2025アジェンダ」の策定や、新たなAEC戦略計画(2026年~2030年)の草案作成について議論し、9月に開催される第56回ASEAN経済大臣会合(AEM)、10月の第24回AEC評議会で進捗が報告される予定だ。
タイ商務省貿易交渉局(DTN)によると、タイ政府は新たなグローバルルールと目されるサステナビリティースタンダードについて、企業が適応し、競争力を強化していくことを非常に重視しており、そういった世界の潮流を踏まえ、新たなAEC戦略計画やAECブループリントの草案を早急に策定するよう求めたという。
新たなAEC戦略計画の起草は67%まで進捗しており、全209項目のうち140項目の戦略的措置は策定が完了したという。うち、最も策定に向けた議論が進展している分野(戦略的柱)は「グローバルなASEAN」(100%)、次いで「シームレスにつながった単一市場に向けたASEAN統合」(83%)、「将来的な危機への対応(食料、エネルギー、金融の安全保障)」(71%)、「分野別協力、デジタル経済とイノベーション」(61%)、「開発ギャップの縮小」(59%)、「気候変動への対応」(54%)だ。
HLTF-EIは11月までに残りの分野(33%)の起草を完了する予定だ。最終的なAEC戦略計画の草案は、ASEAN政治・安全保障共同体(APSC)、ASEAN社会・文化共同体(ASCC)の戦略と統合され、ASEAN共同体の戦略計画の草案の一部となる。その後、関連する閣僚会合やASEAN首脳会議に提出され、マレーシアがASEAN議長国となる2025年5月に、全体の承認と実施に向けた発表がなされる見通し。
日本とデジタル経済、次世代自動車分野での協力について議論
なお、AEMに向けて、2024年に3回目のASEAN高級経済実務者会合(SEOM)が7月9日から14日にかけて、ビエンチャンで開催された。
改正ASEANオーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)については、各国の批准が待たれており、タイは年内の発効に向けて批准を急ぐ構えだ。ASEAN中国自由貿易協定(ACFTA)改正交渉も年内に議論を進展させたい意向だ。また、デジタル経済枠組み協定(DEFA)交渉については、2024年中に50%、2025年中に妥結する目標をあらためて確認した。
また、ASEANカーボンニュートラル戦略に基づき、炭素排出量の削減を促進する方策も話し合った。例えば、ASEAN物品貿易協定で再生品の取り扱いにかかるルールを策定し、循環型製品のサプライチェーンの発展を目指す、グリーンファイナンス・スキームを通じてエコフレンドリーな投資を促進する、事業者に生産過程から排出される温室効果ガス(GHG)を削減するグリーン関連技術に投資するよう呼び掛けるといった措置が提案された。
また、SEOMに併せて、11の対話パートナー(日本、韓国、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、米国、EU、英国、カナダ)の高級経済実務者との会合も実施された。日本とはデジタル経済と次世代自動車分野での協力について議論された。
(北見創、シリンポーン・パックピンペット)
(ASEAN、タイ、ラオス、マレーシア、日本)
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