米フォード、大型EVの導入中止を含む新電動化戦略を発表

(米国、中国、ポーランド)

ニューヨーク発

2024年08月28日

米国自動車メーカーのフォードは8月21日、製品群の見直しを含む、新たな電動化戦略を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社が現在進めている全電動大型3列スポーツ用多目的車(SUV)の開発を中止し、次世代フルサイズピックアップトラック「プロジェクトT3」の生産を当初の2025年から2027年後半に延期するなど、大型バッテリー式電気自動車(BEV)の生産計画を見直す。一方で、3列SUVに新たにハイブリッド技術を導入するほか、需要の大きいBEVの商用バンの生産を2026年に開始するなど、収益性の高い事業に移行する。これら一連の計画変更にともない、最大19億ドルが費用として計上される見込みだ。

フォードの2024年上半期の決算をみると、売上高は前年同期比4.8%増と伸びたが、売上原価の増加などもあって、純利益は13.9%減となった。同社は電気自動車(EV)事業への投資による損失が2024年通年で最大55億ドルに上ると見積もっており、EV事業の見直しによる収益の改善が課題となっていた。

同社はまた、中国車の参入や、コスト意識の高い購入者を視野に入れ、低価格帯の車両も導入する予定だ。マリン・ジャヤ最高執行責任者(COO)は「フォードは、EVで普及が期待できるセグメントは小型で手頃な価格帯だと確信している」「今後参入してくる企業と競争するためには、その分野で勝負しなければならない」と述べ、今回の見直しが中国企業への対応でもあることを示唆した(CNBC電子版8月23日)。また新戦略には、2025年にBEVのマスタング「マッハE」のバッテリー生産の一部を、現在のポーランドから米国ミシガン州ホランドへ移転させることを検討するなど、バッテリー調達に関する見直しも含まれた。ジョン・ローラー最高財務責任者(CFO)は、インフレ削減法(IRA)による税額控除を利用できるよう、米国内でのバッテリー生産の割合を増やすことが収益向上の要となると述べている。

(大原典子)

(米国、中国、ポーランド)

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