米USTR、米ケニアSTIPの「包摂性」章の条文案要約を公開

(米国、ケニア)

ニューヨーク発

2024年08月29日

米国通商代表部(USTR)は8月27日、米国ケニア戦略的貿易・投資パートナーシップ(STIP)の「包摂性」章について、米国側が提案している条文案の要約を公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。条文案の要約公開は今回で4回目となる。11月の米大統領選挙を控え、バイデン政権は交渉を加速させている。

USTRの発表によると、包摂性の章は、女性やジェンダーを理由に疎外されたグループ、若者、障害者、アフリカに起源を持つ離散者(アフリカン・ディアスポラ)、先住民族、地域社会、農村・遠隔地、そのほか十分なサービスを受けていない共同体など、社会のあらゆる層の経済的地位の向上(エンパワーメント)を支援するという共通の目標に沿う内容だとしている。今回公開した条文案の要約PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、上述の趣旨を実現するため「責任ある企業行動」を条文に含むことを提案している。具体的には、米国とケニアの企業が零細・中小企業に過度な負担をかけることなく、国際的に認められた基準やガイドラインにある「責任ある行動」のベストプラクティスの採用・実施を奨励する内容となっている。

USTRはこれまで、税関・貿易円滑化・執行、環境(関連トランプ ゲーム ブラック)、農業、労働者の権利と保護など(2024年4月9日記事参照)、条文案の要約を計3回公開している。バイデン政権は、STIPを含めて現在交渉している通商協定には、市場アクセスに関する規定がないことなどから、議会承認は必要ないとの立場を取っているのに対し、連邦議会が合衆国憲法は諸外国との通商を規制する権限を議会に与えているとして反発していることから、交渉の透明性確保のため、積極的に進捗状況を開示しているとみられる。

ケニアとのSTIP交渉は、直近ではケニアで8月5~9日に行われた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2024年に入ってからは、ほぼ毎月交渉会合を開催している。ケニアのウィリアム・ルト大統領が5月に訪米した際には、ケニアを非NATO同盟国にするなど(米ケニア首脳の共同声明、ブラック、注)、バイデン政権はケニアとの関係強化を重視している。

一方で、11月に米大統領選挙を控える中、民主党の政策綱領では、通商協定に関わる2国間イニシアチブではケニアとのSTIPを明記したが、共和党の政策綱領では「失敗した協定を再交渉する」と記載しており、通商協定に対するスタンスは両党で違いがみられる分野の1つになっている(2024年8月9日付地域・分析レポート参照)。仮に2025年以降、共和党政権となれば、ケニアとのSTIPなど現政権が進めてきた通商協定の交渉停滞が予測されるため、バイデン政権は2024年内の妥結を目指し交渉を加速させている。

(注)ジョー・バイデン大統領とルト大統領の首脳宣言では、STIPとは異なる、商業機会の拡大を目指す新しい商業・投資パートナーシップ覚書の締結が明らかにされた。

(赤平大寿)

(米国、ケニア)

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