紅海混乱などの影響で、外航貨物海上保険にも影響
(香港)
香港発
2024年08月05日
イスラム組織ハマスとイスラエル軍の大規模な軍事衝突が発生して以降、イエメン沿岸付近を航行する民間運航の貨物船がイエメン武装組織フーシ派により拿捕(だほ)され沈没全損となったほか、ミサイルやドローンによる50隻以上の船舶への攻撃などを受けるなど、海運会社はバブ・エル・マンデブ海峡やスエズ運河を通過する航行を見合わせ、喜望峰迂回の航行することを余儀なくされている。ジェトロは7月下旬、在香港の損害保険会社にヒアリングを実施した。
担当者は、紅海危機後のアジア・欧州間の海上物流のコスト上昇について、「喜望峰経由の航路輸送では、配送期間の長期化(平均2週間増加)、サプライチェーンの寸断、物流コストや運賃の大幅な増加などが見られている。特にアジアと欧州間の貿易貨物の混雑やコンテナ不足の原因は(喜望峰経由となったための)コンテナ輸送の長期化によるものだ。紅海危機などによりコンテナ運賃は2年ぶりの高値に上昇したとの報道もある」と述べた。
さらに、保険料の増加とその要因については、「損害保険会社が提供する貨物と船舶を対象とした外航貨物海上保険(注1)には戦争危険(注2)に対する補償も含まれる。戦争・ストライキ危険にかかる保険料の料率は、一般的に保険金額に対する0.4~1%となる。紅海危機以降、多くの主要な海運会社や運送業者は紅海の通過を避けているため、紅海危機による戦争・ストライキ危険にかかる保険料値上げの影響は、直接的には受けていない。しかし、配送期間の長期化や戦争リスクの高まりの影響により、紅海危機発生後、貨物の保険料は約20%上昇している」と指摘した。
保険料の今後の見通しについては、「イスラエルとハマス間の紛争とフーシ派の攻撃が続く限り、紅海を通過する貨物に対する戦争リスクにかかる追加的な保険料が請求されるだろう。保険料の料率については、より多くの船舶が攻撃され死傷者が出るなどの状況の悪化がなければ、安定的に推移するだろう」との見方を示した。
(注1)国際間輸送される貨物を対象に、海上・航空・陸上輸送中に起こり得るさまざまな危険から生じる損害を補償する保険。
(注2)戦争・ストライキ危険に関する補償は、WAR & SRCCと表現され、SRCCはStrikes(ストライキ)、Riots(暴動)、Civil Commotion(内戦など)を指す。戦争・ストライキ危険は、その危険が極めて突発的かつ人為的で、一度勃発するとその損害は巨額に上がる。左記を考慮すると、戦争が生じた場合、陸上に集積した貨物に甚大な損害を与えるため、貨物が海上にある間のみが原則対象となるように保険期間が定められている。
(松浦広子)
(香港)
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