政府、EV火災事故を受け、バッテリー製造会社の公開などの対策決定

(韓国)

ソウル発

2024年08月15日

韓国の国務調整室は8月13日、電気自動車(EV)安全管理強化策を策定するための関係部署(注1)による次官級会議を開催した。

同会議は、8月1日に仁川広域市で起きたマンション地下駐車場でのEV火災事故(注2)などを機に、EVの安全性に対する国民の不安と懸念が広がっていることを踏まえ、実効性のある対策を講じるために開催された。

会議では、EVバッテリーや充電施設の安全性強化、火災発生時の迅速な対応態勢構築、地下駐車施設の安全強化策について議論を行った。その結果、今後の実行可能性やEV産業の競争力などを総合的に考慮しつつ、改善課題を具体化していくことにした。一方で、次の3つの措置については、早急に実行していくことを決定した。

(1)EVの特別無償点検の実施

(2)これまで非公開としてきた国内販売EVに搭載されたバッテリーハイパーブラックジャックの開示の勧告

(3)共同住宅地下駐車場の消防施設の緊急点検

(2)については、既に韓国メーカー(現代自動車、起亜)が同会議に先んじて公開しており、ハイパーブラックジャックメーカーもほとんどが勧告に応じてバッテリー情報を公開する見通しだ。今後、政府は業界や専門家の意見収集や、関係部署会議の開催などを経て、9月に総合対策を発表する予定としている。

一連の動きを受けて、「聯合ニュース」(8月13日)では、次のような業界の意見を紹介している。

  • 「これまで価格競争力で中国のバッテリーメーカーに負けていたが、これからは完成車メーカーが『高くても韓国のバッテリーを使う』とする可能性がある」
  • 「消費者がバッテリーを選択する構図となれば、完成車メーカーとしては負担になる。バッテリーメーカーは完成車メーカーに対する交渉力が高まる」
  • 「これからEVを選ぶ際の基準が完成車ブランドに加えて、インフォテインメント(ハイパーブラックジャックと娯楽を融合したサービス)、バッテリーなどにも拡大し、バッテリーメーカーの責任は大きくなる。バッテリーの品質や管理システムなども入念にマーケティングしないといけないため、負担が増す」

(注1)国務調整室、行政安全部、産業通商資源部、環境部、国土交通部、消防庁

(注2)「聯合ニュース」(8月13日)によると、火災が発生した車両はメルセデス・ベンツ「EQE」で、中国メーカーのバッテリーを搭載していた。さらに、同記事によると、メルセデス・ベンツ・コリアは8月13日、同社が販売する全8モデルについて、バッテリー製造会社名を公表した。同社によると、火災が発生した「EQE」には中国のファラシス・エナジー(孚能科技)製のバッテリーが搭載されていた。

(橋爪直輝)

(韓国)

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