米マクドナルドの第2四半期決算、世界の既存店売上高が2020年以来の減少、価格高騰で客足遠のく
(米国)
ニューヨーク発
2024年08月01日
マクドナルドは7月29日、2024年第2四半期(4~6月期)決算を発表した。米国での既存店舗売上高は前年同期比0.7%減となり、2023年の同期(10.3%増)から大幅に減少した。顧客数の減少の影響がメニューの値上げに伴う客単価の増加の影響を上回ったかたちで、長引くインフレの影響が表れている。米国のみならず、フランスや中国などでも売り上げが減少した結果、全世界の既存店舗売上高も1.0%減と、新型コロナウイルスのパンデミック全盛期の2020年第4四半期(10~12月)以来、初めての減少となった。新規店舗も含めた全店舗での売上高も0.1%減の64億9,000万ドル、営業利益も6%減の29億2,000万ドルだった。
クリス・ケンプジンスキー最高経営責任者(CEO)は、米国で客足が減少している理由について、低所得層の消費者の来店は前年から減少し始めていたが、2024年は米国や他の主要市場で景気の減速がさらに深刻化、拡大していると述べた。同氏によると、食料品価格がレストランでの食事よりも安価になり、多くの人々が自宅で食事することを優先しているという(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版7月29日)。
米金融サービス会社レンディングツリーが2024年4月に米国の消費者2,025人を対象に実施した調査では、米国人の78%はファストフードをぜいたく品とみなしているとした。このうち62%が価格高騰のためファストフードを食べる頻度が減ったと回答しており、特に年収3万ドル未満の消費者では69%に上った。この傾向は年収10万ドル以上の消費者の間でも広まっており、ファストフードを食べる頻度が減ったとした回答者は半数以上(52%)に上り、幅広い顧客層に影響を及ぼしている様子がうかがえる。
米国のファストフード各社は客足を改善する対策として、消費者の手の届きやすい低価格帯メニューを相次いで導入している。マクドナルドは6月末に5ドルのセットメニューの販売を開始した。当初は7月下旬まで1カ月間の限定販売としていたが、集客効果により、米国内の93%の店舗で延長する方針を明らかにした(CNBC7月29日)。
消費者の節約志向の高まりを示唆する動きは他社でも報告されており、スターバックスが7月30日に発表した第3四半期(4~6月期)の決算では、開店後1年以上営業している店舗での売上高は、北米市場で前年同期比2%減少し、2四半期連続の減収となった。2024年に入り、外食費の高騰が続く状況に反して、食料品店での物価上昇が緩やかになり、自宅でコーヒーを飲む人々が増えていることや、ドライブスルーチェーンとの競争激化などが営業不振に響いている(CNN7月30日)。また、米食品・飲料大手ペプシコが7月11日に発表した第2四半期決算(4~6月期)では、売上高が225億ドルと、金融業界の予想(225億7,000万ドル)を下回った。北米の3つの事業部門の売上高が減少し、第2四半期の売上高がアナリストの予想に届かなかった。同社の幹部らは、低所得の消費者が最も経済的困難に陥っていると述べていたが、決算会議では、物価高のために現在はあらゆる所得層の買い物客が購買行動を変えつつあると指摘した(CNBC7月11日)。
(樫葉さくら)
(米国)
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