米カリフォルニア州のAI規制法案に多方面から反対表明
(米国)
サンフランシスコ発
2024年08月30日
米国カリフォルニア州の「最先端人工知能(AI)システムのための安全で安心な技術革新法」(SB1047)案は8月15日に州歳出委員会を通過した。同法は、グーグルやメタといった大手テック企業や、商工会議所などの産業界、学術界からAI開発の妨げになるとの批判を受け(ブラック ジャック トランプ)、生成AI企業アンスロピックの提案に基づいて大幅な修正が加えられた。しかし、カリフォルニア州選出の8人の連邦議員は同日、同州のギャビン・ニューサム知事(民主党)宛てに書簡を送り、同法案が州のAI産業やイノベーション、競争力に対して悪影響をもたらすとして、法案に対する拒否権を行使するよう求めた。さらに、翌16日には元下院議長ナンシー・ペロシ下院議員(民主党、カリフォルニア州)、21日にはオープンAIもそれぞれ同法案への不支持を表明し、法案が成立すればカリフォルニア州のAI産業の優位性が損なわれ、AI産業が州外に転出する可能性があると警告した。
4月に提出された法案は、司法長官が安全管理の不備を理由に、壊滅的な事象が起こる前にAI企業を訴えることが可能だったが、15日に通過した修正案では、司法長官が事後に差し止め令を発動できるという内容に変更。また、AI開発者はモデルの安全性に「合理的な保証」を提供する義務が課されていたが、これも「合理的な注意」にとどめられた。さらに、オープンソースに基づいて作成されたAIモデルに対しては、調整にかかった費用が1,000万ドル未満であれば、責任はオープンソースモデルを提供した企業のものとなることが定められている。
しかし、同法案への不支持表明の中心となっていたAIモデルの開発者が、そのAIモデルを利用して他者が引き起こし得るリスクに対しても全責任を負わなければいけない点や、開発したモデルに対するコンプライアンスの負担がイノベーションを遅延させることへの危惧に関する修正はなかった。
法案の発案者のスコット・ウェイナー州上院議員(民主党)は、規制に反対するテック業界のアプローチでは、公共の安全と健全性を守ることができないと反論し、プライバシー法成立時にもテック業界はカリフォルニア州からの転出を示唆したが、実際にはそうはならなかったと述べた。また、同法がカリフォルニア州で制定されたにもかかわらず、いまだに連邦レベルでプライバシー法が成立していないとも付け加えた。
アンスロピックは8月21日に、州知事宛ての書簡で同法案への支持を表明したものの、懸念点として、監査事項に関する曖昧な文言では、危険を回避するための「合理的な注意」が問題発生前の執行を招く可能性があることや、州の司法長官が「差し止め令」を問題が発生する以前に使うことで、同法の広範な権限を用い、過度な事前介入を招く恐れがあること、問題が発生した際の通知期間の短さや、内部告発者の保護が乱用される可能性があることなどを指摘した。同法案は8月31日までに議会で投票にかけられ、通過すればニューサム知事が9月30日までに承認または拒否権を行使することになる(注)。
(注)同法案は現地時間8月29日、賛成多数で州議会を通過した。
(松井美樹)
(米国)
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