バイデン米政権、インフレ削減法成立2周年迎え、その成果発表
(米国)
ニューヨーク発
2024年08月19日
米国のバイデン政権は8月16日、インフレ削減法(IRA)成立2周年を迎えたことを受け、これまでの成果をとりまとめたファクトシートを発表した。ファクトシートでは「IRAは、大手製薬会社に打ち勝って処方薬の価格を引き下げ、クリーンエネルギーと気候変動対策に史上最大の投資を行い、数十万の高給の仕事を生み出し、医療費とエネルギー費用を下げ、税制をより公平にすることで、既に米国人の生活を変えている」として、同法の果たした役割を称賛するとともに、具体的な成果として主に次の内容を列挙している。
〇ヘルスケアコストの削減
- 医療費負担適正化法(オバマケア)に対する財政支援を強化することで、健康保険の費用を年間平均800ドル節約できるようになり、保険加入者数は2024年に2,100万人に達した(バイデン政権発足時と比べ900万人増)。
- インスリン費用を月35ドルに制限するとともに、推奨されるワクチンの無料提供を実施。
- 製薬会社に対して、インフレ率を超える値上げをした場合のメディケアへの追加リベートの支払い義務を課し、これを医薬品の提供価格に反映することで、高齢者の自己負担を軽減。
- 2025年からメディケア受給者の医薬品の自己負担上限額を年間2,000ドルとし、これにより1,900万人の高齢者が年間で平均400ドルを節約。
- 処方箋薬の価格引き下げにより、2026年だけで納税者負担を60億ドル減少させるとともに、高齢者と障害者は自己負担額を15億ドル節約(バイデン米政権、ブラック ジャック)。
〇気候変動対策
- 政権発足以降、33万人以上の雇用、クリーンエネルギー関連の2,650億ドルを含む9,000億ドルの製造業投資を創出。特に製造業への設備投資は6四半期にわたって過去最高水準となっている。
- 気候変動対策に関連する投資は、収入が中央値よりも低い地域や大学卒業率が全国平均を下回る地域、エネルギーコミュニティー(かつて石炭や天然ガスなど化石燃料の生産を行っていた地域)など、恵まれない地域でより多く実施されている。
- 2023年に340万以上の世帯がヒートポンプや住宅用太陽光発電などに係る税額控除を活用し、84億ドルを節約。
- 2024年1月以降、25万人を超える購入者が電気自動車(EV)税額控除を申請し、合計で約15億ドルを節約。
〇より公平な税制の実現
- 利益10億ドル以上の規模の企業に対する最低法人税率の復活や、企業の自社株買いに対する1%の物品税の導入などにより、10年間で約3,000億ドルの税収増を見込む。
- 内国歳入庁(IRS)を現代化することなどを通じて、富裕層と法人の脱税を取り締まり、今後10年間で4,000億ドル以上の追加徴収を見込む。
(加藤翔一)
(米国)
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