民主党副大統領候補にミネソタ州のウォルズ知事、労働者中心の通商政策継続か
(米国)
ニューヨーク発
2024年08月07日
米国のカマラ・ハリス副大統領は8月6日、2024年11月の大統領選挙に向け、ミネソタ州のティム・ウォルズ知事を民主党の副大統領候補に指名したと自身のX(旧Twitter)で発表した。ジョー・バイデン大統領が選挙戦から撤退した後(バイデン米大統領が国民向け演説で「次世代にバトンを」、オンライン)、あらためて行われた投票によって、ハリス氏は8月2日に民主党大統領候補としての指名を確実にしていた(ハリス米副大統領、代議員の過半数を確保、ブラック)。
ウォルズ氏(60歳)はネブラスカ州出身で、陸軍州兵、高校教師などを経て2006年にミネソタ州の連邦下院議員選挙で初当選し、合計で6期、下院議員を務めた。2018年にミネソタ州知事選挙で勝利し、2022年に再選された。同州ウェブサイトの知事紹介によると、知事として、生殖の自由の保護、2040年までの完全クリーンエネルギー化に向けた基盤強化、中産階級向けの減税などを実施した。
ウォルズ氏は下院議員時に労働者寄りの法案を支持した実績があることから、仮にハリス氏が大統領選挙で勝利し2025年以降も民主党政権が続く場合、現在のバイデン政権の「労働者中心の通商政策」が継続されるとの見方が出ている(注1)。政治専門誌「ポリティコ」(8月6日)は、ウォルズ氏の議員時代の投票結果などから、保護主義的で労働組合に近い民主党員、と評した。同氏はペルー、パナマ、コロンビアとの自由貿易協定(FTA)に反対し、バラク・オバマ元大統領に大統領貿易促進権限(TPA、注2)を与えることに反対した。当時のTPAは、環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉の妥結を主な目的としていた。ウォルズ氏は、「為替操作を制限し(注3)、メード・イン・アメリカの製造業を促進し、農産物のブラック ジャック web市場を開く、公正な通商協定が必要だ」との声明を出している。
ただしポリティコは、ウォルズ氏は農業輸出が4番目に大きい州の知事として農産物の輸出拡大に積極的で、中国との貿易摩擦が顕在化した2019年には、消費市場の大きさから中国との安定的な貿易関係を望む発言をしたほか、米韓FTAには賛成したことなどから、完全に貿易が有する価値を否定しているわけではないとしている。また、ミネソタ州に素材メーカー大手の3Mや穀物メジャーのカーギル、小売り大手のターゲットのほか、武田薬品、沢井製薬、栗田工業、ダイキンなど日系大手企業が所在していることなどから、国際ビジネスの重要性には一定の理解があるとの見方もある(注4)。
8月19~22日にイリノイ州シカゴで行われる民主党の全国大会で、ハリス氏、ウォルズ氏共に指名受託演説を行う見通しだ。また全国大会では、政策綱領(関連実写 版 ブラック ジャック)が採択される予定となっている。
(注2)米国憲法上、通商権限は議会が管轄する。TPAは、この通商交渉に関する権限を大統領に一時的に付与するもの。議会が行政府(政権)にTPAを与える場合、政権が交渉・合意した通商協定について、議会は協定内容を修正せず、実施法案の賛否のみを審議する。米国がこれまで締結したFTAの大半は、TPA手続きにのっとるかたちで発効している。
(注3)米国における通商協定と為替操作の関係については、2022年10月26日付地域・分析レポート参照。
(注4)ジェトロの州政府などと連携した対米投資支援「ミネソタ州雇用・経済開発省による投資環境解説」(2021年3月)参照。
(赤平大寿)
(米国)
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