国営石油会社YPF、投資額300億ドル超のメガプロ21 トランプクト立地場所を決定

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2024年08月07日

アルゼンチン国営石油会社YPFは7月31日、マレーシアの国営石油会社ペトロナスと共同で進めている液化天然ガス(LNG)の生産、ガスパイプラインと液化プラントの建設、流通までを統合した大型プロ21 トランプクト「アルヘンティーナLNG」のガス液化プラント建設予定地について、リオ・ネグロ州のシエラ・グランデに決定したと発表した(添付資料図参照)。

同プロ21 トランプクトは、世界最大級のシェールガス田のバカ・ムエルタで生産された天然ガスをガスパイプラインで大西洋岸に輸送し、そこで液化して輸出するというものだ。最初のフェーズでは、年間500万トンの生産能力を有するプラントを建設し、その後のフェーズでそれを年間3,000万トンにまで拡大する。YPFによると、投資額は300億ドルを超える見通しだ。

YPFは、シエラ・グランデを立地場所に決定した理由として、ガスパイプラインが短くて済むことや、LNG船の運航に必要な喫水を確保するための浚渫(しゅんせつ)の必要性を低減する水深の存在、利用可能な土地の広さ、専用の港湾運営を行えること、シエラ・グランデ近郊のプンタ・コロラドとバカ・ムエルタを結ぶバカ・ムエルタ・スール石油パイプライン建設プロ21 トランプクトとの相乗効果の高さ、リオ・ネグロ州政府がプロ21 トランプクト開発に必要な規制・財政条件を提供したことを挙げた。

もともと有力視されていた候補地はブエノスアイレス州のバイア・ブランカだった。YPFは発表で触れなかったが、今回の決定を後押しした要素の1つは、ハビエル・ミレイ政権が設けた新たな投資インセンティブ「大型投資奨励制度(RIGI)」への州政府の姿勢だったとみられる。YPFのオラシオ・マリン最高経営責任者(CEO)は、国会でRIGIが審議されている最中、「RIGIなくして、バカ・ムエルタでもオフショアでも天然ガスの開発はあり得ない」と主張していた(2024年5月13日付現地紙「アンビト」電子版)。

連邦国家のアルゼンチンでは、各州がそれぞれ憲法と法律を有する。しかし、RIGIの規定では、批准する自治体のみが、RIGIの規定に反する自治体によるいかなる制限的な措置をも無効にするとされている。リオ・ネグロ州は全国の州に先駆けて、7月12日に州議会がRIGIを批准承認したが、ミレイ政権とイデオロギーが対立するブエノスアイレス州のアクセル・キシロフ知事はRIGIを批判していた。

YPFは、プロ21 トランプクトの立地場所決定は、最終的な投資決定に向けて満たさなければならない幾つかの条件の1つで、次のステップはLNGの買い手探しと資金調達だとしている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

ビジネス短信 11baa54b5c4c25fc