16人のノーベル経済学賞受賞者がトランプ氏再選の経済的リスクを表明
(米国)
ニューヨーク発
2024年07月01日
ジョセフ・スティグリッツ氏らノーベル経済学賞を受賞した16人のエコノミストは6月25日、第2期トランプ政権における米国経済のリスクと題する書簡を公表し、政権交代が起こった場合に米国経済に悪影響があると懸念を表明した。
本書簡では、次のように述べられている。(1)米国の経済的な成功には法の支配と政治的・経済的確実性が決定的な要因の1つとなるが、ドナルド・トランプ前大統領の行動は安定性を欠いており、米国の世界的な地位を脅かしている。(2)ジョー・バイデン政権の経済政策はトランプ氏の経済政策よりもはるかに優れている。バイデン政権の政策に基づくインフラや製造業、気候変動対策への投資は米国経済の生産性や成長率を高めるとともに長期的なインフレ圧力を低下させ、クリーンエネルギーへの移行を促進する。このため、バイデン政権があと4年間続けば、米国経済の回復継続を助けることになる。(3)インフレ率は急速に低下してきているが、複数のシンクタンクなど(注)が指摘しているように、トランプ氏が財政的に無責任な予算でインフレを再燃させるのではないかとの懸念がある。(4)以上のことから、今回の選挙の結果は、今後何十年にもわたって経済に影響を及ぼす。第2期トランプ政権が実現すれば、米国の世界における経済的な地位にマイナスの影響を与え、米国経済を不安定にする効果をもたらすと考えている。
本書簡に関し、バイデン大統領の選挙陣営の広報担当であるジェームズ・シンガー氏は「トップクラスの経済学者、ノーベル賞受賞者、ビジネスリーダーは皆、米国がトランプ氏の危険な経済政策に耐えられないことを知っている」と称賛した。一方、トランプ前大統領の選挙陣営の広報担当であるキャロライン・リービット氏は「どの大統領がより多くのお金を国民の懐に入れたかを、価値のない世間知らずのノーベル賞受賞者に教えてもらう必要はない」として一蹴した(CNBC6月25日)。
今回の書簡を含め、トランプ前大統領の掲げるトランプ減税の延長や国境措置の強化などの政策はインフレを再燃させるとの懸念を生じさせているが、これまで行われた世論調査では、有権者はバイデン大統領よりもトランプ前大統領に信頼を寄せているとの結果が示されている(経済への懸念強く、ブラック ジャック)。これまでの世論調査の結果は、インフレなどでの過去の実績が影響しているとみられるが、今後、両候補がインフレ抑制に関する政策論争を深めていく中で、有権者の姿勢がどのように変化していくのか注目される。
(注)投資銀行のエバーコア、保険会社のアリアンツ、シンクタンクのオックスフォードエコノミクス、ピーターソン研究所が挙げられている
(加藤翔一)
(米国)
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