米リビアンと独フォルクスワーゲンが合弁事業を発表、相乗効果に期待
(米国)
サンフランシスコ発
2024年07月03日
米国の新興電気自動車(EV)メーカーのリビアン(本社:カリフォルニア州アーバイン)は6月25日、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)と、次世代のソフトウエアで制御される車両(Software-Defined Vehicle, SDV)プラットフォームを共同で開発するための合弁事業を発表した。
この合弁で、リビアンのソフトウエア、および電気アーキテクチャ(注1)を基盤とし、最高水準のSDVプラットフォームを構築する予定とのこと。リビアンは、システム全体の効率と信頼性を向上させたゾーン・アーキテクチャ(注2)を用いる、テスラ以外では数少ない企業の1つだ。この合弁のため、過去数カ月にわたり、リビアンの電気アーキテクチャやソフトウエアがVWグループの車両と互換性があることを確認するため、多大な作業が行われてきたという。両社は現在、合弁事業の設立を2024年第4四半期に完了することを見込む。リビアンは、10億ドルの初期投資を受け取ったのち、追加の40億ドルを段階的に受け取る予定。また、この合弁事業にはVWグループのVWをはじめ、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニのブランドが含まれる。
相乗効果を生む新たな合弁事業へ
多くのEV専業企業は、コスト削減と高金利によるEVの需要減に苦戦している。EVスタートアップのフィスカーは6月18日に、米連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請している。リビアンは2009年の設立以来、黒字化を達成していない。同社はEVの売り上げは増加しているものの、車両1台当たり3万9,000ドルの損失を出していて、工場での組み立て工程の簡素化や設備の削減などでコスト削減に努め、2024年中に粗利益レベルでの黒字達成を目標にしているという(ロイター6月25日)。一方、VWのEV販売はわずかに減少している中、同社のソフトウエアにはバグが多く、顧客の苦情が多発するなど、EVへの移行に苦戦している。
そのため、この合弁事業で両社の強みを生かし、リビアンはEVの製造コストの削減により損失を解消し、VWはソフトウエアの改善により、さらに競争力のあるEV生産が可能になる見込み。
(注1)車両内の電気システム全体の設計や構造を指し、バッテリー、電動モーター、配線、センサー、制御ユニット、通信ネットワークなどを含む。EVでは、電力管理やエネルギー効率を最適化するために重要。
(注2)車両の電気・電子システムの設計手法の1つ。車両を幾つかの区域(ゾーン)に分割し、各区域内で電子制御ユニットを使用し、複雑な配線を減らすことで効率的で管理しやすい設計となる。
(松井美樹)
(米国)
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