ラオス、地方・慣習的国境における一部の農産物輸入を禁止

(ラオス)

ビエンチャン発

2024年07月01日

ラオス農林省は6月20日、「国内生産が可能な農産物の輸入禁止措置(No.1115/PMO)の実施強化に関する農林省告示(3171号)」を発布し、ラオス全国の地方国境および慣習的国境(注)において、一部の農産物や肉類・淡水魚類の輸入を即日禁止にした。一方で、動物・植物検疫が可能な国際国境では、これらの品目は引き続き輸入は可能とした。

同告示では、インフレや外貨流出を抑えるために農産物の輸出促進を行い、国内生産が可能な品目の輸入を抑制する目的での試験的な輸入禁止措置と位置付けている。また、本措置の導入で農産物価格の変動をモニタリングし、価格上昇など国民生活への負の影響が出ないように対応するとした。

今回の措置により、地方国境および慣習的国境を介した輸入が禁止される品目は次のとおり。

  • 精米および籾(もみ)米
  • 豚、牛、ヤギ、家禽(かきん)類の肉や内臓および生きた家畜
  • 鶏卵
  • 淡水魚およびあらゆる淡水魚由来の製品
  • 葉野菜、芋類、豆類、ショウガ、ナス、キュウリ、トウガラシ、ウリなどの野菜類

ラオスでは2022年3月から2024年5月末までに、現地通貨キープが対ドルと対バーツでそれぞれ52%、46%下落した一方で、周辺国からの食料輸入が続いている。これを受けて、同国政府はインフレを抑え、不足している外貨準備高を増やすためにも輸入を減らし、輸出を促進する政策を検討してきた。

2023年10月に行われた第6回国会では、マライトーン・コンマシット商工相は、輸入削減品目として「農林省は農作物や肉類、肥料・飼料、保健省は食品や薬品、エネルギー省は鉱物や電力、商工省は米、化石燃料、自動車、材木について検討している」とし、2024年6月開催の第7回国会では「検疫など輸入規則の厳格な運用を行う」と説明した。

写真 ラオスのマーケットの様子(ジェトロ撮影)

ラオスのマーケットの様子(ジェトロ撮影)

(注)ラオスでは、第三国からの人の往来や貿易が可能な国際国境に加えて、陸路や水路で国境を接する県内に在住するラオス国籍保有者と相手国の同等地域の国籍保有者のみが往来可能な地方国境と、郡内に在住するラオス国籍保有者と相手国の同等地域の国籍保有者のみが往来可能な慣習的国境が設置されている。地方国境と慣習的国境では、商業目的でない範囲で生活用品、農業用機械(耕運機やポンプなど)、農作物、果物、野菜などの輸入を許可し、輸入関税は50ドル以下であれば免除される。輸出については、農産物と工芸品を許可しており、それ以外の品目の輸出は関係機関からの許可が必要だ〔「地方国境と慣習的国境における商品や物品の輸出管理に関する財務省ガイドライン(No.5308/MOF)」2019年9月16日付〕。原則として商業目的の貿易は禁止だが、実態は商業目的での農産物や日用品などさまざまな物資の輸出入が行われている。

(山田健一郎)

(ラオス)

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