米財務省、2023年CFIUS報告書を公表、審査件数は減少も違反の取り締まり強調

(米国)

ニューヨーク発

2024年07月24日

米国財務省は7月23日、対米外国投資委員会(CFIUS)の活動に関する2023年の報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

CFIUSは、外国から米国への投資が安全保障に脅威をもたらすかどうかを審査する省庁横断の委員会だ。投資内容によっては、CFIUSへの事前申請が義務付けられている場合があるが、それ以外は任意の申請となっている。2023年の報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、簡易的な申告(declaration、注1)は109件と、2021年の164件や2022年の154件と比較して少なかった。CFIUSの詳細な審査が伴う届け出(notice、注2)は233件で、こちらも2021年の272件や2022年の286件から減少した。ただし財務省は、2023年に世界的にM&Aが減少した一方で、CFIUSへの申請案件数は合計で342件と依然として多いと評価している。

企業の国籍別では、簡易的な申告でカナダ(13件)、フランス、日本(ともに11件)、英国(10件)、オーストラリア、韓国(ともに7件)が上位だった。届け出については、中国(33件)、アラブ首長国連邦(UAE、22件)、英国、シンガポール(ともに19件)、カナダ(16件)、日本(15件)、ドイツ(14件)が上位に入った。申告と届け出を合計して産業分野別でみると、「研究開発」(37件)、「発電・送電」(26件)、「ソフトウエア発行」(22件)、「半導体・電子部品製造」(20件)で申請件数が多かった。

財務省は、2023年のCFIUSの活動における特筆すべき点として、取引の承認率の上昇を挙げた。簡易的な申告の30日間の審査期間、および届け出後の最初の45日間の審査期間のいずれにおいてもリスク緩和措置を必要とせず、CFIUSによって承認された取引は2023年に66%で、2022年の58%から増加した。一方で、CFIUSと合意したリスク緩和措置の重大な違反に対する4件の民事上の罰金を挙げた。CFIUSの50年近い歴史のうち、過去に科した民事上の罰金の件数の2倍にあたるという。そのほか、CFIUSの審査期間を再スタートさせる取引(注3)を前年の24%から18%に(件数ベースで63件から43件に)減少させることにより、案件処理の効率化を図ったとした。

ポール・ローゼン財務次官補(投資安全保障担当)は声明で、「2023年はCFIUSにとって、国家安全保障上のリスクに関する取引の審査、(リスク)緩和措置の順守状況の監視、管轄範囲の拡大、CFIUSの法的権限違反に対する執行など、多忙な年だった」としつつ、「昨年CFIUSは、対象取引の審査と調査における効率性とデューディリジェンスを倍増させながら、審査と執行の手段を強化した」と述べた。

(注1)2018年に成立した外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)で新設された申請の種類で、申請者が投資案件の概要を原則5ページ以内にまとめて提出し、CFIUSは受理してから30日以内に審査を終え、申請者に対して追加の行動の要否を伝えるプロセス。

(注2)CFIUSは届け出案件について、第1段階として45日以内に審査(review)を行い、その間に安全保障上の懸念が解決しない場合は、第2段階としてさらに45日間(ただし15日間の延長可)の調査(investigation)を行う。調査を経て脅威を認定した場合は大統領に勧告を行い、大統領はそこから15日以内に取引を阻止するか否かを判断する。調査レポート「米国の経済安全保障に関する措置への実務的対応」も参照。

(注3)CFIUSは届け出後の審査・調査期間(通常90日間)が終了する時点で、申請者に対して届け出の取り下げと再申請を求めることもできる。再申請した場合、90日間の審査・調査期間が再スタートする。CFIUSがこれを行える回数に制限はなく、案件によってはCFIUSから承認を得るまで何度も取り下げ、再申請を経なければならない。

(赤平大寿)

(米国)

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