英政府、ウェールズ北西部で大型原子力発電所の新設計画発表

(英国)

ロンドン発

2024年06月03日

英国政府は5月22日、ウェールズ北西部アングルシー島ウィルバに大型原子力発電所を建設する計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。建設予定地は、2024年3月に英国の原子力産業を支援する政府組織「グレート・ブリティッシュ・ニュークリア(GBN)」が日立製作所から取得した土地(英政府組織GBN、日立保有の土地取得、ブラック)で、政府が原子力発電所建設用地として土地を取得するのは1960年代以降初となる。

建設予定の原子力発電所は、イングランド南西部サマセット州のヒンクリーポイントやイングランド東部サフォーク州のサイズウェルに匹敵するギガワット(GW)級とされ、約600万世帯に60年間、クリーンで安定的な電力を供給し、地域経済を活性化させるとともに、英国の長期的なエネルギー安全保障に寄与するとしている。

政府は原子力発電所建設に向けて、大手エネルギー企業と対話を開始しているとしており、5月12日付の「フィナンシャル・タイムズ」紙は、韓国電力公社(KEPCO)が英国政府とこの件に関して協議していると報じている。

英国は2022年4月に発表した「エネルギー安全保障戦略」で原子力発電について、2030年までに最大8基の原子炉を新設し、2050年までに最大24GWの出力を整備、電力需要の最大約25%を賄うことを目標に掲げている。2030年までには稼働中の大型原子力発電所のほとんどが廃止予定となっているほか、フランスのエネルギー大手EDFの英国子会社EDFエナジーにより建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所については、大幅な工期の遅れやコスト超過などにより難航している。従来型の大型原子力発電所と並行して、小型モジュール炉(SMR)の開発の支援も進めている。GBN主導で技術コンペティションが進行中で、2024年後半に最終選考結果を発表、2029年までに2つのプロジェクトの最終投資決定を行う予定とされている。

(奈良陽一)

(英国)

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