政府が新年度予算発表、IMF新規融資プログラム適用なるかに注目
(パキスタン)
カラチ発
2024年06月24日
パキスタン政府は6月12日、2024/2025年度(2024年7月~2025年6月)連邦予算案を発表した。税収を前年度比37.8%増と大幅に引き上げると同時に、公共投資と州政府への分配金を増加、財政と経済成長を重視した大型予算案となった。歳出総額は18兆8,770億パキスタン・ルピー(約10兆5,711億円、1パキスタン・ルピー=約0.56円)で前年度比30.3%増(添付資料表1参照)、実質GDP成長率は3.6%とした(添付資料表2参照)。
経済危機に直面するパキスタンは、30億ドル規模のIMF融資プログラム「スタンドバイ取り決め(SBA)」が2024年4月に終了後、60億ドルから80億ドル規模のより大型かつ長期にわたる融資プログラムの適用をIMFに要請した。それを受けて、5月にはIMFミッション団がパキスタンを訪問したが、スタッフレベル合意(SLA)に達せず、新年度予算案の内容次第でSLAがなされるものとみられている。
IMFの要請は、納税者の拡大と増税による財政基盤強化、エネルギー分野の累積債務の解消、適切な金融政策と為替政策によるインフレ抑制、国営企業改革など多岐にわたる。予算案では、税収について直接税収を前年度比48.0%増としており、給与所得者に大幅な増税を行う。また、ガソリン開発税(PDL)を1リットルにつき20ルピー引き上げ、国産携帯電話と医薬品(必須薬を除く)への売上税(18.0%)の課税など、国民にとり厳しい内容となっている。
歳出においては、債務利払いが全体の51.8%を占める最大の支出項目となっており、財政出動の余力を奪っている。利払いの約9割は国内債務に対するもので、その額は前年度比で33.8%増加、財政状況は深刻さを増している。2024年5月の消費者物価指数が11.8%にまで低下したことを受け、パキスタン中央銀行(SBP)は6月10日、約1年間22.0%を維持した政策金利を20.5%に引き下げた。しかし、依然として高金利下にあり、利払い負担は政府に重くのしかかっている。
本予算案に対するIMFの評価、そして新たな融資プログラム適用につながるかが注目されている。
(山口和紀)
(パキスタン)
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