中国がEU産豚肉にアンチダンピング調査、過剰生産能力を批判

(中国、EU)

北京発

2024年06月20日

中国商務部は6月17日、EUを原産地とする豚肉と副産物(注1)にアンチダンピング(AD)調査を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。AD調査は即日開始し、2025年6月17日までに終了する予定(注2)。ダンピング調査対象期間は2023年1月1日から12月31日、国内産業の損害調査対象期間は2020年1月1日から2023年12月31日となっている。

この調査の申請は中国畜産業協会によるもの。申請書では、EUからの対象製品輸入量は2020~2023年平均で225万トンと、2016~2019年平均から32.4%増と急増しており、背景には中国に対するダンピングや補助金政策などがあるとした。

具体的には、(1)ダンピングマージン率(注3)が60%以上に達している、(2)EUからの輸入価格が中国内の同様の製品価格と比べて20~50%安価になっている、(3)副産物(内蔵など)はEU内で一般に食用にされず、処理にも費用が必要なため、ダンピング輸出につながっている、(4)EU内での豚肉の年間消費量1,839万トンに対し、生産量は2,265万トンと生産能力過剰で、輸出が過剰解消の手段となっている、(5)EUの2023~2027年予算では、農業分野に対して年平均338億ユーロの補助金が支給されることになっており、うち82%は畜産業を対象としていることを挙げている。

その他、EUからの対象製品の輸入量は中国内生産量の3.37%を占めるにすぎないものの、中国内の生産業者1社当たりのシェアは0.02%にとどまっており、その経営に対する影響は大きなものとした。

今回のAD調査について、商務部は国内の産業界の申請によるもので、法律に基づいた調査を行い、客観的で公正な決定をするとしている。

欧州委員会は6月12日、中国製のバッテリー式電気自動車(BEV)に課す暫定的な相殺関税措置を関係者に事前開示したとして内容を公表しており(欧州委、ブラック ジャック トランプ)、その直後に中国による調査が開始されたことになる(注4)。

EUの反補助金調査開始後の1月には、中国はEU産のブランデーについて、AD調査を開始したが、「中国国内企業の申請に基づいたもので、特定のEU加盟国を狙ったものではない」としている()。

(注1)HSコード02031110、02031190、02031200、02031900、02032110、02032190、02032200、02032900、02063000、02064100、02064900、02091000、05040011、05040014、05040029、5040090の16品目が対象となっている。

(注2)特殊な状況となった場合はさらに6カ月の延長が可能としている。

(注3)ダンピングマージン〔正常価格(国内販売価格)-輸出価格(CIF)〕を輸出価格で除したもの。

(注4)ただし、アンチダンピング調査申請書は6月6日付となっている。

(河野円洋)

(中国、EU)

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