バイデン米大統領、南部国境で不法移民の入国を制限する大統領布告を発表
(米国)
ニューヨーク発
2024年06月05日
米国のジョー・バイデン大統領は6月4日、不法に南部の国境を越える難民に対して亡命申請を禁止する大統領布告を発表した。南部国境で不法移民との遭遇件数が一定数を超えた場合に入国制限措置が有効となる。これにより、入国管理官が合法な残留根拠を持たない移民を入国させない手段を取りやすくし、国境警備隊の負担が軽減されるとしている。
この大統領布告は米国東部時間6月5日午前0時1分から有効になる。国土安全保障長官が1日の不法移民の数を監視し、7日間の不法移民との平均遭遇回数が2,500回以上だったと長官が判断した場合、その直後の東部時間午前0時1分に、入国の一時停止や制限を課す。ただし、当該措置は恒久的なものではなく、7日間の不法移民との遭遇件数の平均が1,500件未満になったと長官が判断した日から14日後の東部時間午前0時1分に入国制限措置は打ち切られる。なお、連邦上院で発表された超党派の国境措置強化法案に含まれるものと同様の人道的例外措置が含まれている。
バイデン大統領が同日に発表したファクトシートによると、米連邦議会の共和党議員が「過去数十年で最も厳しい措置」だった超党派の国境措置法案について、国家安全保障よりも政治的主張を優先して2度も否決したため、今回の行動に出たと述べている。連邦議会上院の共和党は5月23日、大統領に国境を一時封鎖できる権限などを与える超党派の国境措置強化法案を否決していた(バイデン米大統領、オンライン)。発表ではまた「バイデン大統領は就任初日から、国境を守り、破綻した移民制度に対処するよう議会に求めてきた」「過去3年間、議会が行動を起こさない一方で、バイデン大統領は国境を守るために行動してきた」と述べている。
米国では、移民問題を課題視する有権者が増加している。調査会社ギャラップの世論調査(注)では、米国が直面している最も重要な課題は移民問題がトップを占め、2024年1月の20%から上昇し、2~3月は28%、4月は27%だった。なお、米国の主要メディアは今回のバイデン政権の発表に関し、11月の大統領選挙を前にバイデン大統領が国境課題での立場を強化するための積極的な試みと指摘している(政治専門紙「ポリティコ」6月4日)。
(注)4月分は米国の成人1,001人を対象に、4月1~22日に実施。
(吉田奈津絵)
(米国)
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