ベトナム保健省、武田薬品によるデング熱ワクチンを承認
(ベトナム)
ホーチミン発
2024年06月05日
ベトナム保健省の医薬品管理局(DAV)は5月14日、武田薬品工業のデング熱ワクチン「キューデンガ(QDENGA)」の流通と使用を承認した。ベトナムでデング熱ワクチンが承認されるのは初めてだ。
同ワクチンは、過去のデング熱の罹患(りかん)歴の有無にかかわらず、接種前の検査は不要で、3カ月間隔で2回0.5ミリグラム(mg)の皮下接種を行うものになる。これまでにEU、英国、ブラジル、アルゼンチン、インドネシア、タイ、マレーシアなど 20カ国・地域以上で接種可能となっている。
武田ベトナムのカントリーマネージャーであるカタリーナ・ゲッパート氏は「ベトナム保健省によるデング熱ワクチンの承認は、デング熱対策における重要な一歩であり、当社とベトナムの双方の公衆衛生の取り組みにとって極めて重要な節目だ」と述べた。デング熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカと呼ばれる蚊が媒介するウイルス性疾患で、発生地域が125カ国以上に及ぶ。2022年は世界全体の感染者数420万人に対し、ベトナムの感染者数は36万7,729人と1980年以降で最も多く、ブラジルに次いで世界で2番目の感染者数だった。2023年のベトナムの感染者数は、前年比約54%減の17万2,000人以上が確認された。毎年、デング熱の流行は、ベトナム南部地域に集中するが、2023年は北部ハノイ市で感染者数が大幅に増加し、南部ホーチミン市の感染者数1万7,200人の2倍以上の3万6,700人に初めて達した(トイチェ2024年4月22日)。保健省の統計によると、2024年初から4月25日時点までで1万6,000人以上の感染者が確認されており、ハノイ市内では前年同期比で50%以上増加の約600人の感染者が確認されている(「共産党新聞」電子版4月25日)。
感染症対策について、ベトナム国立衛生疫学研究所(NIHE)の感染症対策部ファム・クアン・タイ副部長は「デング熱を予防する効果的で安全なワクチンを国民に接種することは、感染者数と重篤な合併症の数を減少させるのに役立ち、医療リソースの最適化につながる。治療と予防システムの緊密な連携が重要」と話した(トイチェ4月22日)。
(新田和葉)
(ベトナム)
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