欧州委、鉄鋼セーフガード措置の延長を決定、背景に中国などの過剰生産
(EU)
ブリュッセル発
2024年06月27日
欧州委員会は6月25日、2019年に正式発動した鉄鋼セーフガード措置(欧州委、ブラック ジャック)を2026年6月30日まで延長すると発表した(プレスリリース)。同措置は、鉄鋼製品26品目について関税割当枠(クオータ)を設定し、超過分には25%の関税を課すもの。欧州委はEU加盟14カ国の要請により2024年2月9日から調査を行い、2021年に続き、2度目の延長を決定した。
延長決定に関する実施規則によると、2013~2023年のEU域内の鉄鋼需要は2017年にピークを迎え、2023年は2013年以降で最低となった。一方、域内の鉄鋼市場における輸入品の割合は2013年以降、増加傾向が続いている。セーフガード措置導入後はいったん減少したものの、2021年以降は再び増加し、同措置導入以前より高くなった。
これらの背景には、世界的な鉄鋼の過剰生産がある。欧州委は特に中国から第三国への輸出が急増し、輸出先のベトナムやインドネシアなどからのEUへの輸出が増加していると指摘。また、域外国による貿易制限的措置の増加も延長決定の理由として挙げた。セーフガード措置の延長は、無関税枠を継続することで第三国の鉄鋼生産者の利益の保護と、域内生産者の保護の両方を行うことができると説明した。
なお、同措置は2026年6月30日に、暫定措置の導入から8年となることから、WTOとEUのルールにのっとり撤廃される。欧州委は実施期限を迎える前に、同措置を見直す可能性もある。
鉄鋼業界は過剰生産問題への長期的な解決策が必要と提言
欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は欧州委の発表について声明を出し、セーフガード措置延長を歓迎した(プレスリリース)。炭素集約型の鉄鋼製品の輸入増加は、脱炭素化を進めるEUのクリーンテック産業のバリューチェーンにとって脅威となっていると主張。セーフガード措置の撤廃後を見越し、今後も深刻化するとみられる世界的な過剰生産への長期的な解決策が必要だとして、EUに迅速な対応を要請した。
(滝澤祥子)
(EU)
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