モンゴル中銀、政策金利を11.0%に引き下げ
(モンゴル)
北京発
2024年06月03日
モンゴル銀行(BOM、中央銀行)は5月13日に臨時開催した通貨政策決定会合で、経済・金融市場の現状や内外の経済環境の見通し、リスクを踏まえ、翌14日から政策金利を1.0ポイント引き下げて年11.0%にすると発表した。前回の3月に続き、2024年に入って2回目の利下げとなる(添付資料図参照)。
BOMは現状のモンゴル経済について、次のとおり分析している(注1)。
- BOMが2022年から実施している金融引き締め政策は、インフレの抑制と安定化に効果があった。また、2023年に大きく上昇した輸入品や国内の主要食料品の価格が安定したことも、インフレ率の低下に寄与した。
- モンゴルの4月のインフレ率は、全国平均で前年同月比6.4%、ウランバートル市で6.1%だった。需給要因による影響が予想よりも小さかった。
- 2024年のインフレ率はBOMの目標範囲内(注2)で安定する見込み。ただし、賃金や年金の増加や、歳出拡大に伴う需要増加の影響、国際収支圧力の増大などにより、インフレが上昇するリスクがあることには留意が必要だ。
- 好調な外需による高い輸出の結果、外貨準備高が増加し、為替は安定している。しかし、消費財の輸入が伸びている。今後は世界市場での鉱物製品の価格と貿易相手国の状況が主に国際収支に影響する。
- 鉱物製品の需要、価格、輸出の回復に関する外部環境は良好だったが、2024年第1四半期(1~3月)には630万頭の家畜が死亡し、農業部門の生産が縮小した結果、2024年の経済成長は鈍化する見込み(関連ブラック ジャック ルール)。
- ビジネスローンの伸びは、政府が実施している優遇ローンプログラム(注3)を除けば、大きくは回復しておらず、依然として企業の資金調達環境は厳しい状況にある。
これらの経済状況から、BOMの金融政策委員会は「季節性の主要経済セクターが活動期に入る今、金融緩和を行うことで実体経済を下支えする必要が生じたため、政策金利を1ポイント引き下げることを決定した。この措置は、中期的にインフレ率を目標水準内に安定させ、経済・金融の安定性を確保するという政府の政策とも合致している」と述べた。また、今後も国内の景気回復やインフレ見通し、供給側の要因、国際状況の変化に応じて、その都度必要な措置を実施し続けるとした。
(注1)モンゴルの最近のマクロ経済指標の動向については、ジェトロの調査レポート「モンゴル経済概況(2024年3月)」を参照。
(注2)BOMはインフレ率の目標範囲を4~8%と定めている。
(注3)モンゴル政府は、住宅ローンの金利優遇や中小企業支援基金による優遇ローンなど、一定の条件を満たせば通常の銀行ローンよりも優遇された金利で借りられるプログラムを実施している。
(藤井一範)
(モンゴル)
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