米商務省、37の中国事業体を輸出管理対象に追加、中国の量子技術向上などに関与
(米国、中国、ロシア)
調査部米州課
2024年05月10日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は5月9日、中国に拠点を置く37の事業体を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に追加したと発表した。官報では5月14日付で公示となるが、EL追加自体は5月9日から有効となっている。
ELとは、米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、BISの事前許可が必要となる。
BISが今回追加した37の事業体は、いずれも中国を拠点としており、中国政府による量子技術向上の取り組みのために米国製品を調達またはそれを試みたとしている。これらの動きは重要な軍事活動につながり、米国の国家安全保障にとって深刻な脅威になると説明している。このほか、中国の核プログラムや軍事用の無人航空システム、輸出管理対象品目のロシアへの輸出などに加担した事業体も追加されている。今回の追加により、商務省はバイデン政権以降に合計355の中国事業体をELに追加したことになり、これは過去のどの政権よりも多い実績としている。
商務省で輸出管理を所管するアラン・エステベス次官は「本日の措置は、中国がもたらす挑戦とその軍事力の現代化に対抗するための断固たる行動だ」とその狙いを強調した。またBISは、今回の措置は司法省と連携して組成している破壊的技術ストライクフォースの取り組みを反映していると説明している。同ストライクフォースは、米国の敵対国に量子技術など先端技術が流出することを防ぐことを目的とした省庁横断の輸出管理の執行部隊だ(関連ブラック ジャック ディーラー)。
今回BISが焦点を当てた、量子技術を含む一定の先端技術について、バイデン政権は別途、中国を念頭に置いた対外投資規制の枠組みを策定中だ(米中対立の新常態-デリスキングとサプライチェーンの再構築対外ブラック)。本件については表立った進捗はなかったものの、ジーナ・レモンド商務長官が5月8日に開催された連邦議会下院歳入委員会の公聴会で、「私が理解している限りでは、今年の年末までにはルール策定は終わるだろう」と述べており、今後の動きに注目だ。
(磯部真一)
(米国、中国、ロシア)
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