自動車業界から次期政権へ、再エネ普及推進を主張

(メキシコ)

メキシコ発

2024年05月27日

メキシコ自動車産業の業界4団体は5月21日、大統領候補者に向けて、自動車産業の重要性と課題を訴えるレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提出した。作成したのはメキシコ自動車ディーラー協会(AMDA)と、メキシコ自動車工業会(AMIA)、全国バス・トラック・トレーラー工業会(ANPACT)、メキシコ自動車部品工業会(INA)。

同レポートは2012年、2016年、2018年にも作成されており、2012年と2018年は今回と同じく大統領選と重なる年だった。AMDAのギジェルモ・ロサレス会長はレポート提出の目的として「メキシコ自動車産業の世界でのリーダーシップを維持するべく、自動車業界・政府・アカデミアの力を集結させることだ」と語った。

レポートは次の5つの軸で構成されている。

(1)自動車産業:経済、社会発展の原動力

国内における重要性を外貨調達額、雇用創出、対内直接投資受け入れ額などを用いて強調し、世界での重要性を自動車・同部品などの生産額・輸出額から説明。

(2)北米:世界的なリーダーシップを持つ戦略的地域

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)や地理的優位性を生かした自動車・同部品の生産力や、多くの国・地域との自由貿易協定(FTA)による世界に開かれた経済圏であることを強調。

(3)メキシコのモビリティー:カーボンニュートラルへの道

実現に向けた施策や、電気自動車(EV)の普及状況と可能性、生産体制構築に向けた人材育成の重要性、貨物自動車へのグリーン水素導入の必要性などを挙げる。

(4)世界でのリーダーシップを維持するための戦略と優先事項

国内市場、輸出入、社会の発展、環境の4分野で今後優先的に取り組むべき事項を挙げる。

(5)共創:絶え間ない対話と調整

司法・立法・行政や、連邦・州・地方自治体と自動車業界が対話を続け、業界の現状や今後の発展に必要な対策を伝える場を持つ必要性を強調。

INAのアルマンド・コルテス事務局長は、次期政権下で自動車分野が持続可能な成長を継続するには、再生可能エネルギーの発電を促進する政策が重要だと強調した。また、レポートの中でも、貨物輸送トラックへのグリーン水素の導入推進や関連の研究開発・投資の必要性も提案している。

求められる次期大統領候補のクリーンエネルギー政策

メキシコの大統領選は6月2日投票と迫っている。現在も与党・国家再生運動(MORENA)所属のクラウディア・シェインバウム氏が支持率56%で、優勢を保つ(調査会社ミトフスキとエル・エコノミスタによる5月時点のアンケート結果)。同氏はメキシコ国立自治大学(UNAM)で環境工学博士号を取得しており、現政権では特別な取り組みがなされなかったクリーンエネルギーへの関心が高まるのではないかと言われている。

シェインバウム候補の政策集では、「世界的な拠点再配置の動きやメキシコのUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)参加がクリーンエネルギーの需要を押し上げるだろう」としており、政策提言にも「再生可能エネルギーによる化石燃料の代替」が含まれる。自動車を含む国内産業の持続的発展の一助となり得るクリーンエネルギーへの取り組みが次期政権に強く求められている。

(渡邊千尋)

(メキシコ)

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