2023/2024年度の経済成長率、農業を中心に2.4%と好転の見込み

(パキスタン)

カラチ発

2024年05月27日

パキスタン統計局(PBS)は5月21日、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)第3四半期(2024年1~3月)の実質GDP成長率を前年同期比2.1%、2023/2024年度通年の経済成長率が前年度比2.4%(暫定推計値)になると発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した(添付資料表参照)。主要農作物が豊作だったことで、農業分野が成長を牽引したかたちだ。2022/2023年度のマイナス0.2%成長から好転する見込みだが、工業とサービス業の回復が遅れている。

2023/2024年度第3四半期の産業別GDPでは、サービス業、農業、工業が、全生産額のそれぞれ約58%、24%、18%を占めた。

「主要農作物」の小麦、コメ、綿花が豊作だった農業分野は、前年同期比3.9%増となった。特に小麦は、2023年7月以降の生産量が3,144万トン(前年度比11.6%増)と過去最高を記録し、経済回復に大きく寄与した。農業で大きな比重を占める「畜産」も同4.2%増だった。

他方、製造業や建設業の不振は深刻だ。工業分野は、前年同期比3.8%増。そのうち「大規模製造業(LSM)」が同1.5%増、「建設業」は同15.8%減だった。パキスタン自動車工業会(PAMA)の統計によると、2023年7月~2024年4月の10カ月間の乗用車生産台数は62,475台で、前年同期比31.8%の減少となった。それに伴い、販売台数も減少傾向にあり、2023/2024年度はピークを記録した2021/2022年度の23万4,180台に比べ、3割程度の水準にとどまる見通しだ。インフレ抑制で政策金利が22.0%に高止まりする中、4月単月の自動車ローン貸出額は2,357億ルピー(約1,319億円、1ルピー=約0.56円)で前年同月比23.8%減と、依然として低水準だ。

2023年(暦年)の平均インフレ率が30.9%と高止まりする中で、GDPの約6割を占めるサービス業は、前年同期比0.8%の微増だった。サービス業の中で最大のシェアを持つ「卸売・小売業」は同0.4%にとどまり、インフレ下で消費が縮小しているのが見て取れる。

パキスタン経済は、2022年に外貨不足でデフォルト寸前となり経済危機に陥った。政府は輸入規制で外貨流出に歯止めをかける一方、通貨安や原油高でインフレが高進し、中央銀行が金融引き締めで沈静化を図っている。現行の政策金利は経済の足かせとなっているが、効果は徐々にあらわれている。4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比17.3%増となり、3月の同20.7%から上昇幅が縮小しており、今後の利下げが注目されている。

(山口和紀)

(パキスタン)

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