バイデン米大統領、中国企業による米軍施設近隣不動産の購入を禁止、CFIUSの勧告受け
(米国、中国)
調査部米州課
2024年05月14日
米国のジョー・バイデン大統領は5月13日、マインワン・クラウド・コンピューティング・インベストメント(マインワン)による米軍施設近隣の不動産購入を禁止する行政命令を発表した。外国企業による対米投資に伴う国家安全保障リスクを審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告を受けた判断となる。大統領による取引禁止措置は、バイデン政権では初となる(添付資料表参照)。
マインワンは英領バージン諸島などに複数の拠点を有しているが、最終的には中国人が過半数所有する企業とされる。CFIUSを所管する財務省の発表によると、同社は2022年6月に、ワイオミング州に所在するフランシス・E・ウォレン空軍基地から1マイル(約1.6キロ)以内の施設を購入し、特殊な暗号通貨のマイニング作業用にそれを改良した。CFIUSは、同空軍基地との近接性と、マインワンの購入施設にある特殊な設備が国家安全保障上の深刻な懸念を引き起こしたとしている。同空軍基地は戦略ミサイルを扱っており、米国の核の3本柱(注)の主要な構成要素とされる。マインワンの購入施設から、同空軍基地に対する諜報(重宝)活動が潜在的に可能となることが決定打となったようだ。
今回の取引はCFIUSに事前の申告がなかったとされる。外国人による米国の不動産購入をCFIUSに申告するかは任意となっている。しかし、CFIUSは2018年に「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」が成立して以降、リスクが高いとみられる未申告の取引に対する捜査を強化している(2023年10月2日付地域・分析レポート参照)。今回の取引もその一環で捜査対象となった。CFIUSは場合によって、取引の当事者とリスク軽減措置に関する交渉をした上で、一定の範囲で取引を承認することもあるが、今回はそれを認める余地がなかったため、大統領に取引禁止を勧告したと説明している。大統領の命令は、マインワンに対して購入した施設を売却するとともに、同施設の特殊な設備、施した改良を撤去するよう求めている。
CFIUSの委員長を務めるジャネット・イエレン財務長官は「今回の売却命令は、バイデン大統領が米国の国家安全保障に断固たる姿勢で取り組んでいることを示すものだ」との声明を出している。
(注)陸上配備ミサイル(陸)、潜水艦発射ミサイル(海)、爆撃機(空)をもって核抑止力を確保するという戦略概念。
(磯部真一)
(米国、中国)
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