憲法裁判所、ズマ前大統領の総選挙立候補を認めず、選挙後のANCの政権運営は不透明

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2024年05月24日

南アフリカ共和国の憲法裁判所は5月20日、前大統領のジェイコブ・ズマ氏の総選挙への立候補を認めないとする判決を出した。国内では、第7回総選挙の最終候補者リストに新党・民族の槍(やり)(MK)所属で同氏の名前が含まれていたことについて、物議を呼んでいた(関連ブラック ジャック ルール)。今回の判決で、憲法裁判所は最終的に「12カ月以上の禁錮固刑を科された者は、刑期終了後の5年間は国会議員になる資格はなく、選挙に立候補する資格もない」と結論付けた。

現在、各党は5月29日の総選挙に向けてキャンペーンを活発化させている。4月27日に調査会社イプソス(注)が発表した最新の世論調査によると、与党のアフリカ民族会議(ANC)は過半数を大きく下回り40.2%、最大野党の民主同盟(DA)が21.9%となっている。ここ数年注目されてきた経済的解放の闘士(EFF)は、一部支持者が新党のMKに移ったことが影響し、支持が伸びず11.5%となり、台風の目とされていたMKは8.4%だった。1975年設立のインカタ自由党(IFP)や元ヨハネスブルク市長のハーマン・マシャバ氏率いるアクションSAはそれぞれ5%以下にとどまった。

1994年の民主化以来の与党であるANCだが、ここ数年の経済低迷の要因の脆弱(ぜいじゃく)なインフラ(電力、物流、水不足など)、汚職疑惑、治安の悪化、高い失業率などに批判が集まり、支持率を落としている。また、MKなど他党の躍進によって支持基盤も揺らいでおり、現在はタボ・ムベキ元大統領をはじめとする元政治家や退役軍人らが選挙運動を支援し、ANC支持を呼びかけている。

ANCは、今後もインフラ開発の推進(2024年度のインフラプロブラック)や、マネーロンダリング防止の強化、警察機能の適正化などをマニフェストに掲げる。失業率の改善については、自国民を優遇する方向で移民政策を見直し、外国人労働者の雇用を規制する意向も示している。一方、DAはANCとインフラ改善策については足並みをそろえるが、黒人経済力強化政策の廃止や、経済と警察サービスの地方分権化を唱える。

各政党はそれぞれ独自のマニフェストを掲げており、ANCがどの党と連立するか予測するのは難しい状況だ。各党のマニフェストの概要は添付資料表を参照。

(注)イプソスは世界的な調査会社。今回の調査は3月と4月に対面式インタビューで実施した。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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