中銀が新為替相場制度を導入、政策金利も引き上げ

(バングラデシュ)

ダッカ発

2024年05月10日

バングラデシュ銀行(中央銀行)は5月8日、現行の金融政策(Monetary Policy Statement January-Jun 2024、関連ブラック ジャック ディーラー)で検討してきた、「クローリング・ペッグ(crawling peg)」と呼ばれる為替相場制度を導入すると発表し、即時運用を開始PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

中銀は為替市場へのドル売り介入を通じてタカ安を抑制し(2024年4月24日記事参照)、為替レートを1ドル=110タカ程度に維持してきたが、新制度では、外国為替市場に柔軟性を持たせるため、対ドル為替レートの中央値(Crawling Peg Mid Rate、以下CPMR)を設定。当初はCPMRを117タカと定め、商業銀行はCPMRを基準に、顧客向けや銀行間において一定の範囲内でドルの売買を行うことが可能となった。

地場系および外資系の商業銀行関係者によると、同制度は「定められたCPMR(中銀が必要に応じて随時更新する)をベースに、各商業銀行が自行のドル需要と供給に基づき、売買レートを設定するもので、その上限値・下限値は定められていない。これまでより柔軟にレートが変動しつつも、一定の範囲を超えないよう、必要に応じて中銀が市場介入を行うことも引き続き可能」で、中銀によると、近い将来、完全に市場原理に基づいた為替制度を導入する前の移行措置とされている。例えば、地場系大手銀行の1社であるイースタン・バンク(Eastern Bank:EBL)が公表する為替レート(5月9日付)によると、1ドル当たりのスポットレートは売りが117.5タカ、買いは116.5タカとなっている。

中銀はさらに、高止まりが続くインフレの抑制を強化するため、政策金利(レポレート)の現行の8.0%から8.5%への引き上げも決定し、即日導入した。併せて、2023年7月から導入している金利コリドーシステム(注1)の上限金利(Standing Lending Facility:SLF)を9.5%から10.0%に引き上げ、下限(Standing Deposit Facility:SDF)は6.5%から7.0%に引き上げた。また、商業銀行による顧客向けの融資に対して、中銀が参考貸出金利を定める「SMART(Six-months Moving Average Rate of Treasury bills)」制度については、市場原理に基づく金利設定を促すため撤廃され、各商業銀行の裁量で貸出金利を定めることが可能となった。

なお中銀は、外貨準備高減少(注2)の克服も引き続き重要課題に位置付けており、今般の措置を通じて経済活動に直結する、政府および商業銀行の外貨繰りの改善も期待される。

(注1)商業銀行やノンバンクが中銀から政策金利(8.5%)とSLF(10.0%)の間の金利で資金の借り入れを行い、反対に商業銀行やノンバンクが余剰資金を中銀に貸し出す際には、SDF(7.0%)の利率が適用される制度。

(注2)横ばい傾向の外貨準備高(IMF基準のグロス値)は、198億2,674万ドル(5月8日現在PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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