スナク英首相が選挙向け演説、英国の安全維持を最優先事項に
(英国)
ロンドン発
2024年05月14日
英国のリシ・スナク首相は5月13日、シンクタンクで演説し、国際情勢について述べた上で、選挙に向けた保守党の取り組みを示した。
スナク氏は冒頭で、今後数年間は英国がこれまで経験した中で最も危険な一方、最も変革的な年となり得るとコメント。その上で、明確な計画と大胆なアイデアを有し、安全な未来をもたらすことができるのはだれかと問いかけた。
スナク氏はまず現在の国際情勢について、ロシアやイラン、北朝鮮、中国などの権威主義国家が英国や英国の持つ価値観を脅かしており、欧州や中東、アフリカに加えて、英国内でもそうした国々の脅威がみられるとした。
一方で、技術進歩による変化や新たな人材、製品、サービスを求める巨大な市場などの機会もあるとしたほか、洋上風力やヘルスケア分野などのイノベーションを事例に挙げ、最も変革的な時期でもあるとした。
こうした情勢を踏まえた上で、保守党の最優先事項を自国の安全維持としつつ、国民が未来に自信を持てるよう、教育制度の構築や、活発で革新的な経済の実現、英国民としての誇りや国としての一体性の回復に取り組むとした。
野党・労働党に対しては、英国が抱える懸念の原因を保守党政権に押し付け、政権交代が全てを解決するかのように訴えているとコメント。成果を無視し、「未来」という最も重要なものから人々の目をそらそうとしていると批判した。
これに関して、労働党のキア・スターマー党首はメディアに対し、国家安全保障は労働党にとっても最優先事項であり、スナク氏が主張するような安全性の低下は起こらないとコメント。国家安全保障の実現には明確な計画が必要だが、保守党はそのような実績を残せていないと反論した。
労働党は移民政策を発表、不法移民のルワンダ移送を批判
これに先立つ10日には、労働党の移民政策が公表された。その中では、保守党が掲げる不法移民のルワンダへの移送政策を批判、国境警備の強化を優先するとした。そのほか、外国人労働者への依存軽減や国内人材のスキル不足の解消、適切な賃金と労働環境の確保も掲げた。スキル不足の解消については、重要な職業での新たな訓練計画や要件の導入、建設やITなど人材不足の影響が大きい分野での職業実習制度の改革などを通じて取り組むとした。
(山田恭之)
(英国)
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